無呼吸発作 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

無呼吸発作(むこきゅうほっさ)

apnea

執筆者: 鈴村 宏

概要

 20秒以上の呼吸停止、または20秒以内であっても徐脈や低酸素状態を伴うもの。実際の医療の現場では、低酸素状態は経皮的酸素飽和度モニター値(SpO2値)の低下として確認される。

病因

1)未熟性無呼吸

 主に在胎35週未満で出生した児にみられる無呼吸。在胎28週未満の児では90%以上に認めるが、34〜35週頃になると消失してくる。

2)症候性(二次性)無呼吸

 何らかの原因による無呼吸発作。中枢神経系の異常(頭蓋内出血、仮死、先天異常、など)、感染症(敗血症など)、代謝系の異常(低血糖、低Ca血症、低Na血症、高アンモニア血症など)、呼吸器系の異常(上気道閉塞、肺炎など)、消化器系の異常(胃食道逆流など)が無呼吸発作の原因となりうる。

病態生理

1)中枢性無呼吸

 上位中枢から延髄呼吸中枢への刺激が乏しいこと、二酸化炭素高値に対する中枢化学受容器の応答の未熟性、低酸素状態による呼吸抑制、迷走神経を介したHering-Breurer反射が優位な状態にあること、などが考えられている。

2)閉塞性無呼吸

 呼吸運動は消失しないが、上気道の閉塞のため有効な換気ができないことによる。舌根沈下、分泌物の貯留、狭く軟らかい上気道などが原因となる。

3)混合性無呼吸

 中枢性・閉塞性の両方の要因によって起こるもの。

臨床症状

自覚症状


 新生児のため、自覚症状は不明。

他覚症状


 呼吸が停止することにより低酸素状態となり、SpO2値の低下および心拍数低下をきたす。

検査成績

 未熟性無呼吸では、血液検査その他の検査結果に異常は認めない。症候性無呼吸では、その原因に応じた検査異常が認められる。

診断・鑑別診断

 在胎35週以上の児の無呼吸発作では、原発性(未熟性)無呼吸は否定的であるので、何らかの原因検索が必要である。血液検査で血糖・カルシウム(Ca)・ナトリウム(Na)・アンモニアなどの代謝性因子、感染関連項目(白血球数、好中球核左方移動の有無、CRP値)に異常がないかどうかを確認する。血液検査で異常を認めない場合は、中枢性無呼吸の鑑別を行う。頭部超音波検査では脳室内出血および水頭症の有無は確認可能であるが、くも膜下/硬膜下出血は診断できないため、頭部CT検査は必須である。実際、在胎35週以上の児の無呼吸発作は、くも膜下/硬膜下出血によるものが多い。また、無呼吸発作が痙攣の一症状である可能性もあり、必要に応じて脳波検査も行う。また、胃食道逆流を疑う場合は、上部消化管造影を行う。

 在胎35週未満の児でも、無呼吸発作が頻発する場合は、症候性無呼吸(特に感染症による)を考えて検査を行う必要がある。

治療

1)症候性無呼吸では、原因に応じた治療を行う。

低血糖:

 輸液による血糖維持。低血糖が遷延化する場合は、インスリン値の測定を行う。

低Ca血症:

 カルシウム補充

低Na血症:

 まずは、低Naとなった原因を検討する。尿量低下による希釈性低Na血症であれば、尿量低下の原因(心不全、腎不全、感染症、など)を探り、それに応じた治療を行う。尿中にNaのlossが多いことによる低Na血症であれば、Naの補充を行う。

高アンモニア血症:

 重症仮死・敗血症などによる一過性のもの、新生児特発性高アンモニア血症もあるが、先天性代謝異常(尿素サイクル異常、有機酸代謝異常)の有無を検索する必要がある。アンモニア高値に対して交換輸血・血液濾過透析・腹膜透析などの処置が必要となることがある。

中枢性無呼吸:

 高度の硬膜下出血では脳外科的処置を要するが、その他は経過観察と対症療法で無呼吸発作は徐々に消失していくことが多い。無呼吸の原因が胃食道逆流と考えられた場合は、上体挙上、ミルクの粘調度を上げる、などの対処を行うが、重症例は手術を要することもある。

2)未熟性無呼吸の治療

 無呼吸発作時、足底および体幹を刺激することにより呼吸は再開される。保育器の外から児を刺激する装置も開発されている。

 時に、マスクによる陽圧換気が必要になることがある。無呼吸発作を繰り返す場合は以下の治療を要する。どの治療法が優先されるかは、各施設の方針により異なる。

(1)酸素投与

 低濃度(FiO2 0.23〜0.25)の酸素投与が無呼吸発作の予防となる。そのために、保育器内に常に同濃度の酸素投与を維持する必要がある。

(2)キサンチン製剤

 主に呼吸中枢からのアウトプットを増加させることにより、無呼吸発作の予防効果を示す。静注では主にアミノフィリン(アプニション®)を3〜4mg/kgでloadingし、その12〜24時間後から1.5〜2mg/kg/回、1日2回投与で維持を行う。経口療法はアミノフィリンを経口として使用する方法の他、テオフィリン(アプネカット®)を投与することもできる。ただし、テオフィリンの場合は、投与量をアミノフィリンの0.8倍に設定する必要がある。

 アミノフィリンおよびテオフィリンの副作用としては、消化器症状(嘔吐、腹部膨満)、頻脈、血圧上昇、尿量増加などがあり、検査所見異常としては腹部レントゲン写真での腸管拡張、血液検査での高血糖、低Na血症があげられる。血中濃度を定期的にチェックしながら投与量を調整するが、血中濃度が低くても明らかな副作用がみられることがあり、血中濃度のみに頼らないように管理することも必要である。

 また、欧米ではカフェインを無呼吸発作の治療として用いることが多く、本邦においても臨床治験が計画されている。アミノフィリンおよびテオフィリンと比較したカフェインの利点としては、半減期が長いため投与回数が1日1回で良いこと、副作用が少ないことがあげられるが、本邦では静注製剤がないこと、血中濃度が測定できないことが問題である。

(3)ドキサプラム(ドプラム®)

 一般的にキサンチン製剤で効果が不十分である症例に対して用いられることが多い。低用量では末梢の化学受容器に作用し、高用量では呼吸中枢に作用するとされている。投与症例の80%以上で効果がみられる。問題点は持続静注が必要なため輸液ルートの長期確保が必要であることであり、副作用としては嘔吐・腹部膨満などの消化器症状、頻脈、易過敏性、痙攣などが計2%の頻度で報告されている。ただし、稀ではあるが消化管穿孔などの重大な副作用が報告されたため、現在では発売元が新生児には禁忌とした。

 しかしながら、重篤な副作用は1.0mg/kg/hr以上の投与量の時に生じたものであり、低用量(0.2〜0.3mg/kg/hr)での使用でも充分な効果が得られて副作用が少ないことから、日本の60%以上のNICU施設において低用量で使用している。ドキサプラムは、キサンチン製剤と併用することにより投与量を低く抑えることができ、これが副作用軽減につながる。

(4)nasal CPAP(経鼻的持続的陽圧換気)

 経鼻的に気道に一定の圧(3〜5cmH2O)をかけることにより、無呼吸発作が減少する。圧をかけることで上気道の閉塞が解除されることと、肺伸展受容器から呼吸中枢へのインプットが増加することが、無呼吸発作減少の機序とされている。nasal CPAPの合併症は、腸管へのガス貯留による腹部膨満および嘔吐である。

(5)気管挿管による人工換気

 無呼吸発作の最終的治療である。人工換気を開始することによりキサンチン製剤およびドキサプラムを中止できるため、それぞれの副作用から解放されるという利点もある。しかし、人工換気には慢性肺疾患・気道狭窄、肺炎併発などの合併症を起こす危険性があり、他治療とのrisk-benefitを秤にかけた上で、開始するかどうかを決定する。

予後

 治療に抵抗性でなければ児の予後には影響しない。

最近の動向

特になし

参考文献

1) 山崎俊夫:無呼吸発作.周産期医学36:490-492, 2006(増刊号)

2) 高橋滋:新生児の無呼吸発作.小児科医学大系

(MyMedより)推薦図書

1) 市川光太郎 著:小児救急のおとし穴 (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (1)),シービーアール 2004

2) 五十嵐隆 著・編集、渡辺とよ子 編集:新生児医療 (小児科臨床ピクシス),中山書店 2010

3) リヒャルト・デ レーウ・マーイケ シーガル 著、ディック ブルーナ イラスト、Richard de Leeuw・Maaike Sigar・Dick Bruna 原著、野坂悦子 翻訳:ちいさな あかちゃん、こんにちは! 未熟児ってなあに,講談社 2007
 

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