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atopic dermatitis
執筆者: 古江 増隆
本症は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。

表1.アトピー性皮膚炎の定義・診断基準
アトピー素因とはアトピー疾患の家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)を有することまたはIgE抗体を産生し易い素因をいう。
痒みは発作的に激烈になることが多く、痒みによる掻破のために、皮疹はさらに悪化し、痒みが増し、また掻破するという悪循環を繰り返すことが多い。
皮疹は湿疹病変で、急性病変と慢性病変が混在する。皮疹はおよそ左右対側性に分布し、年齢によってその好発部位に特徴がある。
乳児期(2歳未満)では、通常頭部、顔面に初発する。生後1~2ヶ月後より、口囲、頬部に紅斑や丘疹が出現し、浸出液を伴う湿潤性紅斑局面となることが多い。
細菌感染を伴うと浸出液はさらに増加する。ついで躯幹や四肢にも紅斑が出現するようになる。前頸部、膝窩、肘窩、手首、足首などしわのある屈曲部位に好発する。

図1.アトピー性皮膚炎
幼小児期(2~12歳)では、発疹は全体に乾燥性となり、粃糠様鱗屑が顕著となり、躯幹・四肢近位部では鳥肌様に毛孔が目立つ。いわゆるアトピー性乾燥肌(atopic dry skin)といわれる状態である。額、眼囲、頸部や四肢屈曲部位では慢性的な掻破による苔癬化、色素沈着を認めるようになる。耳周囲にはしばしば紅斑や亀裂(耳切れ)が認められる。髪の生え際も好発部位の1つである。眼囲を掻破すると、眉毛の外側部が脱毛する。これをヘルトゲ徴候という。また口唇炎も高頻度に認められ、軽快すると点状~斑状の色素沈着を多発性に残す。
思春期や成人期(13歳以上)になると、発疹は再び上半身に強い傾向を示す。顔面、前頸部~上胸部、上背部、肘窩には特に好発する。顔面の著明な潮紅を認めることも多い(いわゆるアトピー性赤ら顔)。増悪例では乳頭部湿疹がしばしば認められる。手湿疹もしばしば観察される。他の部位の発疹は治癒しても、手湿疹は長期に残存する場合も多い。
以上述べたような症状が乳児期では2カ月以上、その他では6カ月以上出現する場合、本症と診断する。
本症では水分保持能の低下、痒み閾値の低下、易感染性などの皮膚の機能異常が認められ、これにさまざまな増悪・悪化因子が関与して、アレルギー性炎症が引き起こされると考えられている。
原因・悪化因子として食物、発汗、環境因子、細菌・真菌、接触抗原、ストレスなどがあげられる。
検査値ではIgE値の上昇や好酸球増多が患者の80%程度に認められる。また乳児期には卵白やミルクなどに対するIgERASTが陽性となりやすいが、1歳以降になるとダニ抗原の陽性率が急増し、年齢が経るにしたがい真菌抗原や穀物抗原に対するRAST値が上昇してくる。血中LDH値は病勢の短期的なマーカーになりうる。血清IgE値はゆっくりと増減し本症の重症度とおおまかに相関する。
白内障、網膜剥離などの眼合併症には注意する。掻破に伴って眼球が機械的に圧迫されるためか顔面皮疹の重症例では起こりやすい。
単純疱疹ウイルス感染症も重症化しやすくカポジー水痘様発疹症と称されている。伝染性軟属腫や伝染性膿痂疹も頻繁に認められる合併症である。
「悪化因子の検索・対策」、「スキンケア」、「薬物療法」を適切に組み合わせて行う。悪化因子は多岐にわたるため、患者ごとにそれらを把握し、除去等の対策が必要である。
本症では特に乾燥肌が顕著になり、水分保持能の低下、痒み閾値の低下、易感染性など皮膚機能の異常が見られるため保湿薬によるスキンケアが極めて大切である。
薬物療法ではステロイド外用剤、カルシニューリン抑制外用剤および抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤内服は本症の主要な治療薬である。
ステロイド外用剤は5ランクに分けられており、皮疹の重症度に応じて使い分ける。

表2.皮疹の重症度と外用薬の選択
カルシニューリン抑制外用剤は、特に顔面の皮疹に著効する。
古江増隆 著:アトピー性皮膚炎―正しい治療がわかる本 (EBMシリーズ) ,法研 2008
1) 竹原和彦 著:そこが知りたいQ&A アトピー性皮膚炎の最新知識―日本皮膚科学会患者相談システムに学ぶ,医薬ジャーナル社 2001
2) 日本小児アレルギー学会 著、森川昭廣・向山徳子・西間三馨 監修:食物アレルギーハンドブック―保護者ならびに医療スタッフの方々へ,協和企画 2006
3) 清益功浩 著:アトピー治療の常識・非常識~知ってなっとく!最新治療,医薬経済社 2009
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