メッケル憩室 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.12

メッケル憩室(めっけるけいしつ)

Meckel's diverticulum

執筆者: 江村 隆起

概要

 メッケル憩室は最も頻度の高い腸管奇形であり、発生頻度は無症状例を含めると1~4%といわれ、性差では2倍ほど男性に多い傾向がある。その位置は回盲弁から100cmまでの口側に存在するが、乳児では40cmを越えることは少ない(図1)。その大きさは数~5cm程度である。
 

病因

 メッケル憩室は卵黄腸管遺残の一型であり、卵黄腸管の一部が閉塞せずに腸間膜付着部の反対側に発生した真性憩室である。

診断・鑑別診断

 メッケル憩室は合併症(下血、イレウス、憩室炎、腸重積)により発症するので、それぞれの症状の鑑別診断法に従って診断することになるが、術前診断が困難なことも少なくない。メッケル憩室に対して最も有効な検査はメッケルシンチであり、異所性胃粘膜への集積を利用して行われている。下血を呈するような異所性胃粘膜を有するメッケル憩室ではメッケルシンチでの診断率(81%~95%)が極めて高い。また1回の検査では描出されない場合でも繰り返し行うことにより描出されることも多い。イレウスや憩室炎といった急性腹症として発症する場合には時間的余裕がないことが多く緊急手術となることが少なくない。近年の内視鏡機器の進歩により小腸内視鏡にて偶然は発見される症例もある(図2)。 (図2は山形大学医学部第二内科武田弘明先生のご厚意による)

治療

下血症例

 メッケルシンチによりメッケル憩室と術前診断され治療されることが多い。小児例でも腹腔鏡補助下憩室切除が行われることも少なくない。

イレウス症例

 全身状態が比較的安定している場合には、イレウス管を挿入しイレウス症状を改善した後の腹腔鏡補助下憩室切除が有効である。

憩室炎、腸重積症例

 急性腹症として発症するため緊急手術の適応とされ、開腹手術時に診断されることが多い。

その他

 「他の原因で手術中に発見されたメッケル憩室を切除するべきか」については意見が分かれているが、合併症を起こしやすい4つのリスク・ファクター1)男性、2)50歳以下、3)長さ2cm以上、4)触診で憩室内の部分的肥厚(異所性胃粘膜の存在を示唆する)がある、のうち1つでもあれば切除するべきと考えられる。

病態生理と臨床症状

 メッケル憩室は回腸壁と同じ構造を持つ真性憩室で通常無症状である。しかし、憩室内の異所性胃粘膜からの出血、憩室炎及び穿孔、憩室を先進部とする腸重積、mesodiverticular band(臍腸管動脈の遺残物)による腸閉塞(イレウス)などの症状を呈することがある。有症状例の約半数は2歳以下であり、異所性胃粘膜による出血が多い。成人期の有症状例は稀であるが、この際にはイレウスや憩室炎が多い。

下血

 最も頻度の高い合併症である。憩室内の異所性胃粘膜による消化性潰瘍が原因である。発症年齢は早く5歳までに初回の下血をみることが多い。通常、腹痛のない下血を呈するが、軽度の腹痛をともなうこともある。また比較的大量の下血をみることがある。診断には99mTc-pertechnetateによるシンチグラフィー(以下メッケルシンチ)が有用である。

イレウス

 メッケル憩室と臍との間の索状物やmesodiverticular bandが絞扼性イレウスの原因となる。またメッケル憩室先端部の癒着がイレウスの原因となることがある。若年者で開腹歴のないイレウスの鑑別診断としてメッケル憩室は常に考えられるべき疾患であるが、病状が急激に進行することから原因不明の絞扼性イレウスとして開腹されることが多く術前診断される症例は少ない。

憩室炎

 憩室炎は年長児や成人で起こりやすい合併症である。臨床像は急性虫垂炎と似ており鑑別が重要であるが、術前診断に診断されることは稀である。 

腸重積

 メッケル憩室が重積の先進部となり発症する。特発性腸重積の好発年齢(3ヵ月~2歳)でない時や腸重積を反復する時に考慮すべき基礎疾患として重要である。特発性腸重積と比較し注腸整復されないことが多く、腸切除となる症例が多い。

(MyMedより)推薦図書

1) R.M.カーク 著、幕内雅敏 翻訳:イラストでわかる外科手術基本テクニック,エルゼビア・ジャパン 2005
  2) 下間正隆 著:カラーイラストでみる外科手術の基本―ILLUSTRATED BASIC SURGERY,照林社 2004

3) 井清司 著:救急外来腹部診療スキルアップ (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (9)),シービーアール 2006

4) 市川光太郎 著:小児救急のおとし穴 (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (1)),シービーアール 2004
 

免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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