MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。

MyMed


このページを印刷
最終更新日:2010.07.21

ランゲルハンス細胞組織球症(らんげるはんすさいぼうそしききゅうしょう)

Langerhans cell histiocytosis (LCH)

執筆者: 塩原 正明

概要

 LCHは、骨髄由来の抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞が皮膚、骨、リンパ節、肺、肝臓、脾臓、中枢神経系などの臓器にモノクローナルに浸潤増殖する疾患である1) 。WHO分類ではhistiocyte and dendritic cell neoplasmsのカテゴリー中に含まれる。病型は単臓器単病変(Single-System Single-Site, SS)、単臓器多病変(Single-System Multi-site, SM)、多臓器多病変(Multi-System Multi-Site, MM)に分類される。2歳以下に多いが年長児や成人でも発症する。

病因

 ランゲルハンス細胞のモノクローナルな増殖性疾患であるが、その病因は不明である。

病態生理

 樹状細胞の一種であるランゲルハンス細胞がT細胞、好酸球、マクロファージなどとともに病変部に認められる。また病変部ではTNF-a, GM-CSF, IL-1, IL-3, IL-4, IL-8などのサイトカインが分泌みられ、本疾患の病態との関連が示唆される。

臨床症状

 日本における多施設共同研究であるJapan LCH study group (JLSG)-96の統計によるとSingle Systemの場合骨病変が多く、Multi-Systemでは皮膚と骨の頻度が高く、肝臓、脾臓、骨髄、リンパ節、肺、中枢神経などにも病変がみられる2)


 (図1 頭髪部にみられた皮疹)

 

 (図2 前胸部にみられた皮疹)

 

 (図3 頭蓋骨にみられた打ち抜き像)


 骨病変は頭蓋骨が最も多く、上肢の長管骨、肋骨、骨盤、脊椎骨などにもみられ、腫瘤触知、骨痛を認める。皮膚病変では脂漏性皮膚炎の紅斑および丘疹がみられることが多い。肝臓では黄疸や腹水を認める。肺ではのう胞病変から多呼吸や咳そうがみられる。中枢神経病変では尿崩症、成長ホルモン分泌不全性低身長を認める。
 またLCH発症後に変性性中枢神経病変を認めることがある3)

検査成績

 血液検査は診断の決め手にはならないがCRP、soluble IL-2 receptorの上昇を認め、病勢を反映する。骨病変では、単純X線検査では打ち抜き像や骨融解像を、骨シンチでは骨病変部への集積像を認めることでスクリーニングをする。骨髄穿刺で骨髄浸潤の有無を検索する。MRIやCT、Gaシンチで全身への浸潤臓器の検索を進める。

診断・鑑別診断

確定診断は病変部位の病理診断による。
 


(図4 表皮内および真皮に組織球様細胞浸潤を認める。これらの細胞は淡好酸性の比較的豊かな胞体を持ち、腎臓形にくびれた核を持つ。一部多核や核異型のある細胞も見られる)



 (図5 S100染色 陽性)
 


 (図6 CD1a染色 陽性)


 ランゲルハンス細胞は免疫染色でCD1a, S100の他CD4やCD14が陽性になる。電子顕微鏡ではBirbeck顆粒を認める。

治療

 骨病変単独の場合はそうは、またはステロイド局所注射を行うが、自然治癒する場合もあるので治療しないで経過を追うこともある。

 多病変を伴う場合は多剤併用化学療法を行う。JLSG-02プロトコールによる標準的寛解導入および維持療法は、初期治療としてcytosine arabinoside(Ara-C)/vincristine(VCR)/predonisolone(PSL)を6週間、その後Ara-C/VCR/PSLとmethotrexate(MTX)/PSLを交互に用いる維持療法を6ヵ月、さらにvinblastine(VBL)/PSL/MTX/6-mercaptopurine(6MP)による維持療法を4.5ヵ月行う2) 。小児再発LCHに対し、purine nucleoside analogueの一つである2-chlorodeoxyadenosine (2-CDA)の有効性が報告されている4) 。また、難治症例に対し造血幹細胞移植が試みられている5)

予後

 JLSG-96の結果からSM型の寛解率は97%、再発率30%、4年生存率100%、MM型の寛解率51%、再発率22%、4年生存率97.5%だった2) 。非寛解導入例のサルベージ療法の反応性は不良であった。残存する障害として尿崩症、椎体骨折などの整形外科的合併症、難聴、小脳症状などの神経学的後遺症、成長障害などがある。急性骨髄性白血病や甲状腺がんなどの二次がんの報告もあるがエトポシドによる治療の影響と考えられる6)

参考文献

1) Willman CL, Busque L, Griffith BB, et al. Langerhans cell histiocytosis (Histiocytosis X: A clonal proliferative disease). N Engl J Med 331:154-160, 1994.

2) Morimoto A, Ikushima S, Kinugawa N, et al. Improved outcome in the treatment of pediatric multifocal Langerhans cell histiocytosis. Cancer 107:613-619, 2006.

3) Imashuku S, Ishida S, Koike K, et al. Cerebellar ataxia in pediatric patients with Langerhans cell histiocytosis. J Pediatr Hematol Oncol 26:735-739, 2004.

4) Stine KC, Saylors RL, Williams LL, Becton DL. 2-Chlorodeoxyadenosine (2-CDA) for the treatment of refractory or recurrent Langerhans cell histiocytosis (LCH) in pediatric patients. Med Pediatr Oncol 29:288-292, 1997.

5) Ringden O, Ahstrom L, Lonnqvist B, et al. Allogeneic bone marrow transplantation in a patient with chemotherapy-resistant progressive histiocytosis X. N Engl J Med 316:733-735, 1987.

6) Egeler RM, Neglia JP, Arico M, et al. The relation of Langerhans cell histiocytosis to acute leukemia, lymphoma, and other solid tumors. Hematol Oncol Clin North Am 12:369-378, 1998.

執筆者による主な図書

小川聡 総編集、小池健一・塩原正明 分担執筆:内科学書 改訂第7版 第6巻 血液・造血器疾患,中山書店 

執筆者による推薦図書

浅野茂隆・池田康夫・内山卓:三輪 血液病学 第3版,文光堂

(Mymedより)その他推薦図書

1) 三輪史朗・渡辺陽之輔 著:血液細胞アトラス,文光堂 2004

2) Marshall A. Lichtman・Thomas J. Kipps・Ernest Beutler・William J. Williams 原著、奈良信雄 翻訳:ウィリアムズ血液学マニュアル,メディカルサイエンスインターナショナル 2003

3) 神田善伸 著:血液病レジデントマニュアル,医学書院 2009
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ この記事に関するご意見をお聞かせください。


このページを印刷


※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
  なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。

メールアドレス: メールアドレス(確認用):
医療関係者の方はご選択ください: