手の先天異常 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.15

手の先天異常(てのせんてんいじょう)

Congenital Anormalies of the Hand and Fingers

執筆者: 三浦 俊樹

概要

 生まれながらに手・指に異常がある確率は出生1000人に対して1.25人であり、体表の異常の20%は手の異常であるという報告(宮城県での調査)があります。手の異常の中にも様々な種類がありますが、日本人で最も頻度が高い異常は母指(親指)の多指症で、他に合指症などがあります。多指症は本来の指以外に指の本数が多い状態です。母指多指症は重複母指とも呼ばれます。合指症は指が分かれていない状態です。このパターンには人種差、地域差もあり、アメリカの報告では合指症(19%)、多指症(15%)の順に多いとされています。また、幼児では母指のいわゆる第1関節が曲がっていて、完全に伸ばせない状態もよく見られます。これは強剛母指(先天性バネ指)という疾患ですが、最近の調査では強剛母指は生まれた直後にはなく乳幼児期に発症するため厳密には「先天」異常ではないことも知られてきました。


 母指多指症



 合指症

病因

 手・指の原型である肢芽の形成は受精後26日で見られるようになり、8週では手指が既に形成されています。この段階で異常の多くがおこりますが、日本手の外科学会では手の先天異常を、形成障害、分化障害、重複、指列誘導障害、過成長、低成長、絞扼輪症候群、骨系統疾患および症候群の部分症、その他と 10項目に分類しています。多指症は重複、合指症は指列誘導障害に分類されます。実験的には指の発生に過程に関与する遺伝子やサイトカインも解明されてきています。

病態生理

 日本人に多い母指多指症は発生段階で散発的に重複がおこった場合が大部分です。特にその他の合併疾患を伴いやすいわけではありません。それに対しアフリカ系の人に多いとされる小指側の多指症では遺伝的素因や他の異常の合併も指摘されています。指の発生段階においては一塊りの肢芽の中で指の間に相当する部分にアポトーシス(予定された細胞死)がおこることで“くびれ”が生じて指が分離されていきます。この指の分離がおこらなかった状態が合指症です。強剛母指ではA1プーリーと呼ばれる腱鞘があるレベルで屈筋腱が腱鞘内をスムーズに通過出来なくなっています。このため親指を完全に伸ばすことが出来ません。一方、母指を伸ばせないもう一つの状態に握り母指という疾患があります。握り母指では指を伸ばす伸筋腱の形成不全があります。

臨床症状

 多指症は外観からすぐ異常がわかりますが、日本人では母指が重複していることが大部分です。軽症例では豆粒程度の余剰指がぶらぶらついている程度のこともあります。母指がどのレベルから二股に分かれ始めるかによって母指多指症を分類します。指が重複しているといっても一つ一つは本来の大きさよりは小さいことが多く、それぞれに腱や神経血管などの軟部組織が個別に存在する場合から一部分は共有している場合もあります。合指症では指の間が開かないため、異常があることは外観から判明します。合指が多い部位は中指と薬指(環指)の間です。軟部組織だけがつながっている皮膚性合指と骨の分離が完成していない骨性合指があります。強剛母指では親指のいわゆる第1関節を完全に伸ばすことが出来ません。1歳弱の時点で母指の変形に親が気づくことが多いのですが、子供は自分の指によく適応するため訴えはあまりありません。母指の付け根で腱に生じた結節状のしこりが触れます。

検査成績

 多指症、合指症ともレントゲンで骨・関節の状態を確認します。

治療

 多指症、合指症とも機能的な改善と整容的な改善も期待して生後半年位から1歳半頃までに多くの場合手術が行われます。手術の方法として、多指症では発達の悪い方の指を切除しますが、関節や腱を2本が共用している場合には将来的な関節の不安定性や変形を残しにくいように靱帯の再建なども同時に行います。合指症では複数箇所の合指がある場合、一つずつ分けて手術を行います。合指となっている部分の皮膚をジグザグに切開して軟部組織の結合を分離します。多くの場合、分離手術に伴って一部に皮膚を移植する植皮術が必要になります。強剛母指は自然軽快も多いので3歳頃まではあわてて手術は行いません。痛がらせない程度にストレッチをする程度で経過をみます。改善がみられない場合には手術も選択肢のひとつです。手術は小切開でA1プーリーという腱鞘を切開するだけですが、小児の場合局所麻酔のみで手術を行うことは通常困難なので全身麻酔が必要になります。

予後

 小さい年齢での手術では発達に伴って追加の矯正が必要になる場合もあります。多指症では切除後関節の安定性が悪く指のジグザグ変形が起きてくることがあります。合指症では分離した指間が浅くなってくることもあります。手術後もしばらくは成長に伴う経過を年単位で見ていく必要があります。

最近の動向

 乳児期での全身麻酔の安全性が向上しているので、多指症や合指症では脳で手の使い方に関するイメージができあがる前に手術をします。

(MyMedより)推薦図書

1) S・テリー・カナリ,藤井克之,三浪明男 著:キャンベル整形外科手術書 第9巻 手,エルゼビア・ジャパン 2004

2) 堀内行雄 編集:手の外科 (整形外科専門医を目指すケース・メソッド・アプローチ),日本医事新報社 2005,

3) 三浪明男 著・編集:手関節・手指II (最新整形外科学大系),中山書店 2007
 
 

免責事項

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