食道アカラシア - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

食道アカラシア(しょくどうあからしあ)

執筆者: 田中 秀明

概要

 アカラシアとは、嚥下時に本来起こるべき下部食道括約筋(LES, lower esophageal sphincter)の弛緩に問題があるために、食物を胃へ送り込めず食道の著しい拡張をきたす病態である。成人に多い疾患であるが全体の約10%が小児である。乳児期に診断されることもあるが多くは学童期に発症し、100万人に1人の頻度で見られ、男児に多い。

病態生理

 食道の筋層間神経叢にあるNO作動性神経が消失することにより食道の蠕動とLESの弛緩不全をきたすと考えられている。この機序として、何らかのウイルス感染などの環境要因が筋層間神経叢での炎症を起こし、遺伝的要因をもつ人において自己免疫反応を惹起するのではないかと言われている。

臨床症状

 嚥下障害が基本的な症状である。長期にわたる嚥下困難、不消化の食物の嘔吐、誤嚥性肺炎、体重増加不良または減少をきたす。拒食症などの精神疾患と間違われることもある。

検査成績

 胸部単純写真にて拡張した食道とその中にair-fluid levelがみられることがある(図1*)。上部消化管造影では拡張した食道とECJでの狭窄を認める(図2)。食道内圧検査で診断は確定する(図3*)。嚥下に伴うLESの弛緩が不完全で、LESの圧が高く(>30mmHg)、食道体部での蠕動不全を示す。

図1* アカラシアの患者の胸部レントゲンにおける食道内air-fluid level(矢印)


図2   アカラシア患児の食道造影。LESの弛緩不全とrat-tail deformityを認める。


図3* アカラシア患児の食道内圧検査。LESの基礎圧の上昇があり、嚥下(S)にてもLES弛緩が起きない。

治療

 バルーン拡張術(pneumatic dilatation)によりLESの筋層を広げる治療がまず行われる。しかしこの効果は数ヶ月しか持続しないことが多く、反復して行われなければならない。LESにボツリヌス毒素を内視鏡下に注入する方法は近年小児にも試みられている。長期的な効果、安全性は不明であるが、これも反復投与を要する。
 バルーン拡張術で効果が思わしくない場合は手術療法を選択する。開胸または開腹にて下部食道から噴門部にかけて筋層切開を行う(Heller myotomy)。胸腔鏡や胸腔鏡を用いた手技も行われ良好な成績が収められている。

参考文献

W Park, M Vaezi. Etiology and Pathogenesis of Achalasia: The Current Understanding. Am J Gastroenterol 2005;100:1404-1414
V Khoshoo, D LaGarde, J Udall. Intrasphincteric Injection of Botulinum Toxin for Treating Achalasia in Children. J Pediatr Gastroenterol Nutr 1997;24:439-441
Laparoscopic Heller Myotomy with Anterior Fundoplication Ameliorates Symptoms of Achalasia in Pediatric Patiets. J Am Coll Surg 2007;204:977-986
L Sitz. Achalasia. Pediatric Surgery Fifth Edition. Chapman & Hall Medical : 333-340
J Raffensperger. Achalasia Swenson’s Pediatric Surgery Fifth Edition, International Edition.. 823-826

図1*, 3*
Reprinted with permission of the American Pediatric Surgical Society,www.eapsa.org. Article and graphics adapted from O'Neill: Principles of Pediatric Surgery. (c) 2003, Elsevier.

(MyMedより)推薦図書

1) 聖隷三方原病院嚥下チーム 著:嚥下障害ポケットマニュアル,医歯薬出版 2003

2)岡田正 監修、伊藤泰雄・福澤正洋・高松英夫 編集:標準小児外科学 (STANDARD TEXTBOOK),医学書院 2007
 

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