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執筆者: 滝田 順子
神経芽腫は乳児期の自然退縮をきたすような予後良好なものと、年長児の極めて予後不良なものの2群に分類される。
わが国では1985年より乳児例に対する乳児神経芽腫全国統一プロトコールと1歳以上で発見される病期3、4の進行神経芽腫を対象とした厚生省研究班プロトコールが施行されてきた。これらは共にMYCN増幅の有無により治療を層別化している。
乳児のMYCN増幅例と病期4で骨転移のある例は年長児の進行神経芽腫に準ずる治療を行う方針となっている。
以前より神経芽腫の予後不良群の30~50%にMYCN遺伝子の増幅がみられることが報告されていた。従って、MYCNは神経芽腫の進行に関与する遺伝子と推定されている。
最近、我々はALK遺伝子が神経芽腫のとくに進行例の一部で異常を起こしていることを見出し、この遺伝子の異常な酵素活性の上昇が病因の一つであることをつきとめた。
ALK遺伝子は当初、悪性リンパ腫で転座によりNPM-ALKキメラ遺伝子を作る遺伝子として発見された。
ALKたんぱくは細胞膜貫通ドメインを1つだけ持ち、細胞内領域にはチロシンキナーゼドメインを有する。
ALKは肺癌でも細胞内キナーゼドメインが他のパートナーと融合して活性型がん遺伝子となることが報告された。
我々は「SNPアレイ」と呼ばれる解析装置を用いてがんゲノムの異常を高精度に検出する技術を開発し、この技術で200例以上の神経芽腫のゲノム異常を詳細に解析した。その結果、神経芽腫の約10%の症例で、ALK遺伝子に増幅またはミスセンス変異が生じていることを見いだした。これらの神経芽腫ではALKの酵素の機能が過剰に働くことが細胞のがん化につながっていると考えられる。
乳児例では限局性のものが多く、健診や他の疾患の診察時に腹部腫瘤として偶然発見されることが多い。新生児や3か月未満の例では呼吸困難を伴った肝腫大で発見されることもある。年長児例は一般的に腹部膨満、発熱、顔色不良、四肢痛で発見されることが多い。
その他の症状は、腹痛、高血圧(腫瘍から分泌されるカテコールアミンあるいは腎性高血圧による)、下痢(血管活動性小腸ペプチド産生によるVIP症候群)、眼球突出や眼球運動異常(眼窩転移による)、リンパ節腫脹、皮下腫瘤など極めて多彩である。
縦隔原発例では脊柱管内意に進展し(dumb-bell型)、下肢麻痺などの神経症状がみられるものもある。頚部交感神経節原発のものはHorner症候群を呈することもある。
1) 腫瘍マーカー尿中vanyllylmandelic acid (VMA)、またはhomovanillic acid (VHA)のいずれかの上昇を90%以上の症例で認める。非侵襲的検査であることからも尿中VMA、HVAの測定は第一に行うべきである。血清NSE、LDH、フェリチン値は非特異的であるが、病勢を反映するので合わせて検査を行う。
2) 画像検査腹部超音波検査、腹部X線、CTまたはMRI検査を行う。全身の転移巣の検索にはMIBG腫瘍シンチ、骨シンチおよび2か所以上の骨髄穿刺または生検を行う。
3) 確定診断腫瘍の生検。MYCNの増幅の有無、DNA index、染色体など生物学的予後因子の検索も行う。4)病期分類 International Neuroblastoma Staging System (INSS)が標準的に用いられている。
4) 病期分類 International Neuroblastoma Staging System
神経芽腫の治療は、外科的治療、化学療法、放射線療法が基本であるが、1歳以上の進行例もしくはMYCN増幅例に対しては、造血幹細胞移植も行われている。
本疾患を疑った時点で小児外科医と小児血液腫瘍の専門医がいる施設に紹介する。特に進行神経芽腫の疑いがある場合は移植可能な施設を紹介することが望ましい。
1歳未満の神経芽腫stage1、2、3、4sは予後良好で5年生存率は90%以上である。1歳未満の神経芽腫stageも年長児に比べると予後は比較的良好で70%程度である。
1歳以上の神経芽腫stage1、2はやはり予後良好で5年生存率は90%以上、stage3は70%程度、stage4は予後不良で30%程度である。
1. 家原知子他:乳児神経芽腫における治療の軽減。小児外科33:1221-1227, 2001
2. Kaneko M et al: Treatment results of advanced neuroblastoma with the First Japanese Study Group Protocol. J Pediatr Hematol/Oncol 2:190-197, 1999
3. Matthay KK et al: Treatment of high-risk neuroblastoma with intensive chemotherapy, radiotherapy, autologous bone marrow transplantation and 13-cis-retinoic acid. N Eng J Med 341:1165-1173, 1999
4. Chen Y, Takita J, Choi YL, et al. Oncogenic mutations of ALK kinase in neuroblastoma. Nature 455:971-974, 2008
1) 神田善伸 編集:みんなに役立つ造血幹細胞移植の基礎と臨床〈上巻〉,医薬ジャーナル社 2008
2) 神田善伸 編集:みんなに役立つ造血幹細胞移植の基礎と臨床〈下巻〉,医薬ジャーナル社 2008
3) 岡田正 著:系統小児外科学,永井書店 2005
4) 月本一郎 編集:小児血液・腫瘍疾患治療プロトコール集,医薬ジャーナル社 2003
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