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aseptic meningitis
執筆者: 小林 茂俊
細菌塗抹・培養によって病原体が証明されない髄膜炎のことをいう。ウイルス、リケッチア、マイコプラズマ、真菌、結核、自己免疫、薬剤、化膿性髄膜炎の不完全治癒などその原因は多岐にわたるが、大部分がウイルスによるものである。そのため、臨床の現場ではウイルス性髄膜炎を念頭において語られることが多い。ウイルス性髄膜炎は一般的に軽症であるが、その他の病原体による髄膜炎は重症、難治であることが少なくないことから、ウイルス以外でも多くの病原体がこの病態を起こしうることを常に認識しつつ診断するべきである。
ウイルスの中ではエンテロウィルスが85%を占める。エコーウイルス、コクサッキーB群ウィルス、エンテロウィルス71型が多い。エコーウイルス、コクサッキーウイルスでは、エコー30型、6型、7型、あるいはコクサッキーB5型、B3型、B4型などの流行が報告されている。ムンプスウィルス、単純ヘルペスウィルスなども原因となる。その他、マイコプラズマ、真菌、結核、ブルセラ、レプトスピラ、クラミジア、寄生虫なども無菌性髄膜炎の原因となりうる。不完全に治療された細菌性髄膜炎もこの疾患形態をとることがあり、注意が必要である。悪性疾患、自己免疫疾患の症状の一部として発症することもある。

上記の病原体が感染することによって発症する。感染経路は病原体により異なる。最も頻度が高いエンテロウイルスの場合は、基本的に患者からの糞口感染、飛抹感染による。潜伏期は、エンテロウイルスの場合には4 ~6日である。
各病原体により症状はそれぞれ異なるが、一番多いエンテロウイルス感染による場合を一般的な例として説明する。発熱、頭痛、嘔吐がその三主徴であるが、細菌性髄膜炎の症状よりは軽度であることが多い。頭痛は前頭部、あるいは後眼窩痛であることが多い。他に、各病原体に特徴的な症状がみられることがある。エンテロウイルスの場合は腹痛や下痢、発疹などである。乳児早期では不機嫌、易刺激性、嗜眠、だっこされるのを嫌がるなど症状が明確でない場合もある。
他覚所見として、項部硬直やKernig徴候など髄膜刺激症状が、乳児では大泉門の膨隆が認められる。
ウイルス性髄膜炎では、髄液検査で単核球優位の数十~数千個/ mm3、通常100~500個/mm3程度の細胞数増多がみられるが、病初期は好中球優位のこともある。髄液中蛋白は正常か軽度増加する。髄液糖は一般的に正常である。一般的な血液検査では異常を認めないことが多い。ウイルスの検索はウイルス性髄膜炎が比較的軽症であり自然治癒することから必須とまではいえないが、必要に応じて患者髄液、咽頭、便、血液を用いて、ウイルス分離やペア血清による抗体検査などウイルス学的検索を行う。最近はPCR により、エンテロウイルスをより迅速に診断することも可能である。他の病原体が疑われる時は、髄液の塗抹、特殊培養、免疫学的検査など、疑われる病原体に特異的な検査を行う。髄液中の糖の減少があれば、不完全に治療された細菌性髄膜炎、白血病の中枢神経浸潤、脳腫瘍、マイコプラズマ、結核、真菌を疑う根拠となる。
特有の症状と髄液検査により診断する。地域による流行状況、渡航歴や野外での活動も含めた詳細な病歴なども手がかりになる。細菌性髄膜炎も含めウイルス性以外の髄膜炎の除外は大切である。耳下腺の腫脹がみられればムンプスを疑う。マイコプラズマ髄膜炎では、呼吸器感染に引き続いて起こることが多い。結核や真菌による髄膜炎の場合には、発症が比較的ゆっくりであり、徐々に頭蓋内圧上昇による症状が出現する。微熱や性格変化、易刺激性、食欲不振などの非特異的な症状がある場合も多い。結核、クリプトコッカス、ヒストプラスマなどでは、肺に病変を伴うことがある。前述したが、不完全に治療された細菌性髄膜炎には注意を要する。
ウイルス性の場合、原則として入院による対症療法を行う。髄液検査により頭蓋内圧が低下し症状が軽減することが多い。流行時で診断が明確であり軽症の場合は、外来治療のみの場合もある。脱水時には輸液を行うが過剰にならないよう注意する。ウイルス以外のものは病原に特異的な治療を要する。
ウイルス性髄膜炎は一般に予後良好で、後遺症を残すことはほとんどないが、回復後数週間で神経学的評価を行うことは必要である。特にムンプスでは聴力の評価が必要である。乳児期早期の無菌性髄膜炎で発達の遅れやてんかんなどがみられることがあり、比較的長期の経過観察が必要である。その他の無菌性髄膜炎は病原体により予後が異なる。
1)Cherry JD and Shields WD. Aseptic meningitis and viral meningitis. In Textbook of Pediatirc infectious diseases 4th Ed., Saunders, Philaderphia, 457‐467,1998.
1) Karen L. Roos 著、湯浅龍彦 翻訳:髄膜炎の100章 (神経学の100章シリーズ),西村書店 2003
2) 市川光太郎 著:小児救急のおとし穴 (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (1)),シービーアール 2004
3) 千葉厚郎 監修:ナースのための早引き脳神経疾患ハンドブック,ナツメ社 2008
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