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最終更新日:2010.07.27

粘液嚢胞(ねんえきのうほう)

別名: 粘液貯留嚢胞

執筆者: 又賀 泉

概要

 粘液嚢胞は粘液貯留嚢胞とも呼ばれ、粘液腺の排泄管が外傷あるいは炎症などによって閉鎖されて生じた嚢胞をいう。従って嚢胞壁は上皮を伴わないことが特徴である。粘膜下の小唾液腺に生じることが多い。大きさは大豆大あるいは小指頭大で、粘膜から半球形に膨隆し、表面は平滑で、定型的なものでは青紫色を呈する。触診により波動を触知し、穿刺を行うと、無色透明粘稠な液を得る。

 粘液嚢胞(mucous cyst,mucocele)、粘液貯留嚢胞(mucous retention cyst) は粘液瘤(mucocele)とも呼ばれ、大きく舌下面嚢胞(Blandin-Nuhn嚢胞)、がま腫(ranula)、口唇とくに下唇に好発生するものは発生頻度多く名称も同じ粘液嚢胞(mucous cyst, mucocele)で、上顎洞内底部に発生する粘液嚢胞、ムコツェーレ(mucous cyst, mucocele)がある。

 口腔における粘液嚢胞の部位別発生頻度 ― 石川、秋吉によると、対象166例のうち、下唇が50%、口底25%、舌16%、頬粘膜9%である。口腔に発生する粘液嚢胞は唾液腺由来で、下唇の口唇腺由来は粘液嚢胞、口底の唾液腺導管由来はがま腫、舌は前舌腺由来の舌下面嚢胞(Blandin-Nuhn嚢胞)である。上顎洞内底部のものは上顎洞粘膜に粘液腺由来である。

舌下面嚢胞


1 舌下面嚢胞 (Blandin-Nuhn嚢胞、前舌腺嚢胞)        


好発部位
 舌下部(舌下面部)−正中部         

好発年齢
 幼児、小児の低年齢層        

性差
 男女の差はない        

由来する唾液腺
 
前舌腺(粘液腺)−小唾液腺        

原因
 
 早生歯(乳歯)の切縁の刺激により、前舌腺が刺激されて破れ、  そこより嚢胞化したもの

外観
 
(臨床的所見)色、硬さ - 粘膜面に盛上がった半球形、波動性を伴った軟らかい半透明の嚢胞               

大きさ
 
米粒大から大きいもので小指大        

嚢胞壁
 
多くは線維性結合組織および肉芽組織の層からなり、上皮の被覆 は見られない。cf上皮裏装を伴うものはsalivary duct cyst(唾液腺導管嚢胞?) と呼ばれ、停滞型粘液嚢胞とは区別して分類されている(WHO,AFIP)。耳下腺が多い。成因は粘液栓、唾石、外傷や炎症の続発症、腫瘍術後。
前歯部外傷。        

内容液
 
無色透明で、粘稠な液体(ムチン主体)        

治療
 摘出(外科的切除)   レ−ザ−切除        

予後
 
再発することがあるが悪性化することはない         

鑑別疾患
 
線維腫、乳頭腫の良性腫瘍                                                     



10歳男児に生じた舌下面嚢胞

粘液嚢胞


2 粘液嚢胞 (mucous cyst)                


好発部位
 
下口唇(上顎犬歯相当部位)                
特に歯列不正を伴うものや、下口唇を噛む不良習慣        

好発年齢
 
幼児、小児の低年齢層から成人まで        

性差
 
男女の差はない        

由来する唾液腺
 
口唇腺(粘液腺)        

原因
 
上顎犬歯の慢性刺激や、下口唇を噛む不良習慣、咬傷により口唇腺およびその導管が破れて嚢胞化したもの        

外観
 
粘膜面に盛上がった半球形、波動性を伴った軟らかい半透明の嚢胞        

大きさ
 
米粒大から大きいもので小指大        

嚢胞壁
 
多くは、線維性結合組織および肉芽組織の層からなり、上皮の被覆は見られない         

内容液
 
無色透明で、粘稠な液体もしくはゼラチン状        

治療
 
摘出(外科的切除)        

予後
 
取り残しをすると再発しやすいが悪性化することはない        

鑑別疾患
 
血管腫、線維腫、乳頭腫の良性腫瘍、腺性口唇炎、咬傷   



8歳男児に生じた粘液嚢胞  

ガマ腫

3 ガマ腫 (ranula)           


名称
 
『ガマ腫』という名称は、外観がちょうどガマガエルが呼吸する時に   膨らんだ喉頭(喉頭嚢)の形(半球状)によく似ているためにこの名称が付けられた。        

好発部位
 
舌下・口底        
発生部位により、(1)舌下型、(2)顎下型、(3)舌下・顎下型 がある。                
大半は舌下口底に発症するが、大きくなると舌が挙上され、 オトガイ下部にも膨隆をきたし、嚥下や呼吸困難をおこすことがある。 通常片側性であるが、両側にできるものもある。 大きいものは、正中を越えて両側にまたがるものもある。  類皮嚢胞、類表皮嚢胞、鰓原性嚢胞との鑑別が重要。           

好発年齢および性差
 
大多数は青春期以後の女性に多い。        

由来する唾液腺
 
顎・舌下腺導管                

解剖学的注意                 


 顎下腺導管はワルトン氏管(Wharton's duct) 、舌下腺導管は リビヌス氏管 (Rivinus's duct) と呼ばれ、この二つの導管は 開口部である舌下小丘付近で一本になる。しかし、名称については最近ではそれを名付けた人の名前即ちワルトン氏管、リビヌス氏管 とは言わず、それぞれ下腺導管、舌下腺導管と呼称する。        

原因
 
 顎・舌下腺導管の損傷によって周囲の組織中に唾液が流出(溢出)  し、その唾液成分をとり囲んで肉芽組織が増殖してこれが時間が経過 すると線維化して嚢胞壁を形成すると考えられている。         

外観
 
(臨床的所見)−色、硬さ    粘膜面に盛上がった半球形、波動性を伴った軟らかい半透明の嚢胞                

大きさ
 
米粒大から大きいもので小指大        

嚢胞壁
 
内面が上皮で被われた嚢胞腔を有する「停滞型」と腺組織あるいは唾液腺管の損傷などにより溢出した唾液成分を取り囲むように線維化 してできた「溢出型」がある。 多くは、線維性結合組織および肉芽組織の層からなり、上皮の被覆 は見られない。 時に粘液性物質が炎症性肉芽組織と混ざりあって粘液肉芽腫の像を 呈する。      

内容液
 
無色透明で、粘稠な液体        

治療
 
嚢胞の全摘出(外科的切除)  開窓療法−大きい嚢胞や取残しが考えられる場合におこなう       

予後
 
取り残しをすると再発しやすい。 悪性化することはない。 再発を繰り返す場合は舌下腺を摘出する    

鑑別すべき疾患
 
類皮嚢胞、類表皮嚢胞、鰓原性嚢胞。血管腫、リンパ管、口底の炎症、口底癌。        

鑑別疾患の説明                


類皮嚢胞 (dermoid cyst)  嚢胞壁に毛、毛嚢、汗腺、皮脂腺など皮膚付属器官を含む
                
類表皮嚢胞 (epidermoid cyst)   皮膚付属器官を含まず、角化性扁平上皮のみ、類皮嚢胞より頻度 が高い             

鰓原性嚢胞  鰓弓の癒合不全  



16歳女子に生じたがま腫(舌下型)

上顎洞内粘液貯留嚢胞


4 上顎洞内粘液貯留嚢胞、ムコツェーレ(mucous cyst, mucocele)


概念
 
上顎洞内底部の粘液腺から発生するものを粘液嚢胞、ムコツェーレ(mucous cyst, mucocele)という。腺組織は副鼻腔でも上顎洞に最も多く、漿粘液腺である。上顎洞内粘液貯留嚢胞のみが唾液腺に由来しない貯留嚢胞である。  

診断
 
臨床においては無症状に経過するため、パノラマX線所見などで偶見的に 診断されることが多い

発生機序
 
洞粘膜内の腺導管の拡張および上皮裏装のある嚢胞を形成する漿液腺や粘液腺 の部分的閉塞から生じるものと、上皮下の支持組織へ呼吸上皮が嵌入しすることにより生じるものが考えられている。 歯の慢性炎症性刺激も誘因となる。

発生頻度
 
1.4~9.6%

X線学的特徴
 
上顎洞底部のド-ム状で内部均一で境界明瞭な病変として偶見的に観察される ことが一般的

治療
 
 無症状のため絶対的治療の対象となる訳ではなく放置しても問題はない。 大きくなって鼻閉感などの自覚症状や鼻のうっ血などの鼻症状のを伴うような ものは摘出。

組織学的特徴
 
組織学的には二つのタイプが報告されていて、これらは内面の上皮の裏装が 認められない溢出型と、上皮の裏装が認められる停滞型である(石川)。上顎洞内に発生する上顎洞底部のド-ム状嚢胞性病変は停滞型であるとされている。




免責事項

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ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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