くる病 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.26

くる病(くるびょう)

Rickets

執筆者: 北中 幸子

概要

 くる病とは、骨基質の石灰化不全によっておこる病態の総称であり、骨変形と成長障害を主徴とする小児期の代表的骨疾患である。その原因はカルシウムやリンの低下であり、ビタミンDの作用欠乏や、リン排泄の増加による。
 くる病をおこす疾患には、栄養性のものにビタミンD欠乏性くる病、遺伝性のものにビタミンD依存性くる病I型・II型、低リン血症性くる病があり、その他に肝性くる病、腎性くる病、未熟児くる病、薬剤性くる病(抗けいれん薬等)などがある。

病因

 ビタミンD欠乏症は、栄養状態の悪かった昔は多く、日光浴が推奨されてから一時減少した。しかし近年、世界的に再び増加している。その原因として、母乳栄養が推進されるようになったこと、日光浴不足、食事制限がある。母乳中のビタミンD含有量は少なく、ビタミンD欠乏症はほとんどが母乳栄養児にみられる。また、最近の紫外線に関する情報から、過度に紫外線を回避した場合や、高緯度の地域や冬季には、ビタミンD欠乏がおこりやすい。
 食物アレルギーに対する食事制限(特に卵や魚)、菜食主義や偏食が原因となることも多い。その他にもビタミンD欠乏は、消化管切除後や肝胆道疾患などにより、脂溶性ビタミンの吸収が障害されておこることもある。未熟児くる病は、通常胎児期後半に得られるカルシウム・リン蓄積がないためと考えられている。

 遺伝性くる病のうち、ビタミンD依存性くる病I型は、生体内でのビタミンD活性化に重要となる1α水酸化酵素の異常による。その原因遺伝子は、染色体12q13.3にあるビタミンD1α水酸化酵素である。ビタミンD依存性くる病II型は、活性型ビタミンDに抵抗性を示すタイプである。その原因遺伝子は、12q12にあるビタミンD受容体である。いずれも、常染色体劣性遺伝形式をとる。
 低リン血症性くる病では、X染色体優性遺伝を示す、X連鎖性低リン血症性くる病(X-linked hypophosphatemic rickets; XLH)が最も多い。XLHの原因遺伝子はXp22.1にあるPHEX (phosphate regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)である。それ以外にも、常染色体優性低リン血症性くる病(Autosomal dominant hypophosphatemic rickets; ADHR)、常染色体劣性低リン血症性くる病(Autosomal recessive hypophosphatemic rickets; ARHR)、高カルシウム尿症を伴う遺伝性低リン血症性くる病(Hereditary hypophophatemic rickets with hypercalciuria; HHRH)がある。
 これらの原因遺伝子も最近同定されてきており、ADHRは、染色体12p13.3にあるFGF(fibroblast growth factor) 23、ARHRは、染色体4q21にあるDMP1(dentin matrix acidic phosphoprotein 1)、HHRHは、染色体9q34にあるSLC34A3の遺伝子異常による。他にまだ原因遺伝子の同定されていない家系もある。

病態生理

 くる病は大きく分けて、ビタミンD作用の欠乏による場合と、リン排泄増加による場合がある。ビタミンDは、皮膚で合成あるいは食事から吸収されるが、その後まず肝臓で25水酸化ビタミンD[25(OH)D]となり、さらに腎臓近位尿細管で1水酸化酵素により、活性型ビタミンD[1α,25(OH) 2D]となる。生合成された活性型ビタミンDは、標的組織(腸管・腎・骨・副甲状腺など)において、核内受容体であるビタミンD受容体(VDR)に結合する。活性型ビタミンDが結合したVDRは、標的遺伝子プロモーター上のビタミンD応答配列に結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。最終的にこの遺伝子産物が、生体内カルシウム濃度維持など多くの生理作用を発揮すると考えられている。このいずれかの段階での異常によりビタミンDの作用が欠乏すると、血中カルシウム濃度を維持することができず低カルシウム血症となる。さらに低カルシウムによる二次性の副甲状腺機能亢進が加わることにより、血中リン濃度も低下しくる病となる。
 ビタミンD欠乏性くる病は、活性型ビタミンD産生のもととなるビタミンDが不足するためにおこる。ビタミンD依存性くる病I型は、ほとんどの症例が1水酸化酵素遺伝子の機能喪失型の変異による。つまり、本疾患は、生体内での1水酸化酵素活性の欠損により、活性型ビタミンDを産生できないため、ビタミンD作用が欠如する。ビタミンD依存性くる病II型は、VDRの異常による。VDRの異常により、活性型ビタミンDの作用が標的器官で発揮されない。ただし臨床的にビタミンD依存性くる病II型と診断されていても、VDR遺伝子の変異が認められない症例もある。また、ビタミンD依存性くる病II型では、脱毛が特徴的であるが、本疾患のモデルマウスであるVDR遺伝子欠損マウスでもみられる。その発症機構はまだ明らかではないが、皮膚のVDRには、1α,25(OH) 2Dが関係しない毛根での作用があると考えられている。

 XLHでは、腎近位尿細管でのリン再吸収障害によるリン利尿のため、低リン血症となる。さらに、この疾患では、通常低リン血症でみられるはずの血中1α,25(OH)2D濃度の上昇がない。つまり低リン血症に加えて活性型ビタミンD産生障害があることにより、カルシウムとリンが低下し、くる病となる。
 原因遺伝子PHEXの異常がなぜリン利尿をおこすのかは、まだ明らかになっていない。PHEXは、膜結合型エンドペプチダーゼと相同性が高いことなどより、何らかの基質を分解する因子と考えられる。その基質としてリン利尿活性を有するphosphatoninと呼ばれる液性因子の存在が想定されている。つまり、健常者ではphosphatoninがPHEX遺伝子産物によって分解されるが、XLH患者では分解されず、リン利尿がおこると考えられている。
 ADHRの原因遺伝子であるFGF23は、ポジショナルクローニングにより同定された。正常のFGF23は176から179アミノ酸のコンセンサス配列部分で蛋白が分解され、リン利尿が抑制されるが、ADHRではこの部位に変異をもつため、FGF23は分解されず、リン利尿が亢進し低リン血症をおこす。

臨床症状

 低カルシウム性のくる病では、乳児期には、低カルシウム血症によるけいれん、筋力低下による運動発達の遅れなどがみられる。くる病の一般的な症状としては、骨の縦方向への伸長障害による成長障害、類骨の横方向への拡大による関節部の膨隆や肋骨念珠 (rachitic rosary)、歩行開始後は骨強度の低下によるO脚など下肢の変形がみられる。その他、横隔膜付着部の肋骨の陥凹(Harrison溝)、頭蓋骨の変形(craniotabes)、歯のエナメル質形成不全などがみられる。
 発症時期は、ほとんどが乳幼児期であるが、ビタミンD依存性くる病II型は多様であり、成人後に骨軟化症で発症した軽症例もある。II型のみの特徴的な所見として、乳児期からみられる脱毛が約半数に認められる。低リン血症性くる病では筋力低下は認めず、活発なことが特徴である。早期に齲歯になりやすく、歯髄炎を発症することもある。成人後は、骨軟化症となり、骨の疼痛、齲歯などの症状がある。XLHは、一般に症状は女児より男児が重症である。

検査成績

 いずれの病型においても、骨レントゲン検査でくる病の特徴的とされる、骨端中央部の杯状陥凹 (cupping)、骨端部辺縁の不整(fraying)、骨端部の拡大(flaring)を生じる。これは、骨端軟骨部において、石灰化されない類骨が増殖するためである。また血中ALPが高値となる。ビタミンD作用不足によるくる病では、血中カルシウム低値、リンは正常から低値であり、二次性にPTHが高値となる。病型の診断は、血中ビタミンD代謝物質測定で行う。低リン血症性くる病では、低リン血症を主体とし、過リン酸尿、%TRP低値、TmP/GRF低値となる。低リン血症にもかかわらず1,25(OH)2Dは正常からやや低値である。血中PTHは正常上限からやや高値を呈することが多い。

診断・鑑別診断

 ビタミンD欠乏症では、25(OH)D(現在保険適応外)が低下していることが重要であり、血中1α,25(OH)2Dは様々で高値をとることもあるので注意が必要である。ビタミンD依存性くる病I型は、血中25(OH)Dは正常から高値であり、1α,25(OH)2D濃度が低い。II型は、血中1α,25(OH)2Dが高値となる。ただし、これらの値から区別できない時もあり、そのような時は、治療反応性によって鑑別する。低リン血症性くる病では、血中リン低値、%TRP低値、TmP/GFR低値となる。XLHの親から出生した児の早期診断には、低リン血症とTmP/GFRの低下、あるいは遺伝子診断を用いるとよい。ビタミンD欠乏症でもII型やXLHと類似する検査所見となることがあるので、注意が必要である。
 最終的な確定診断、予後や遺伝性を知る上では、遺伝子診断が有用である。II型では、皮膚線維芽細胞などを用いた機能解析が治療法選択の目安となる可能性がある。他のくる病の鑑別診断としては、尿細管障害やFanconi症候群(リン排泄亢進)、腎尿細管性アシドーシス(アシドーシスによる骨塩の溶解)、慢性腎不全(ビタミンD1α水酸化障害)、抗けいれん剤投与によるもの(ビタミンD不活化亢進)、未熟児、カルシウム・リン欠乏などがある。

治療

 ビタミンD欠乏症及びビタミンD依存性くる病I型は、生理量の活性型ビタミンDが有効である。1α(OH)D3を0.01-0.05 μg/kg/日で治療を開始する。治療が有効であれば、血清ALPが2-4週で低下、血中カルシウムが増加し、PTHが2-4ヶ月で低下し、骨X線所見は半年以内に改善する。欠乏症では原因を特定するために、栄養法(母乳かミルクか)、食事内容や制限(ビタミンDは卵や魚類に多く含まれる)、外出や日光浴、日焼け止めの使用、その他の基礎疾患についての検索し、その対策を同時に行う。欠乏症ではそれらの改善により、投薬を中止しても再発しないはずである。
 I型では維持量は1α(OH)D3を0.01-0.03 μg/kg/日とされるが、ビタミンDの有効量と中毒量が近接しており、血中カルシウム値と、尿中Ca/Cr比(0.3未満)で調節する。
 ビタミンD依存性くる病II型は、大量の活性型ビタミンD(1α(OH)D3 5-60 μg/日)が必要である。ただし、治療反応性は症例によってかなり異なり、概して脱毛を伴わない例は反応しやすいようである。重症例では、乳酸カルシウム 3-5g/日の併用、さらには、カルシウムの経静脈的投与を要する例もある。一方では、自然治癒したり、初期治療後、治療を中止できる症例もある。
 低リン血症性くる病では、血清P値2.5 mg/dl前後を目安として、活性型ビタミンD製剤 (1α(OH)D3 0.05-0.2 μg/kg/日)単独、あるいは中性リン製剤(0.5-1.5 g/日、分4-6)と併用する。本症では、ビタミンDの活性化障害があることが、活性型ビタミンDを投与する根拠の一つである。治療に伴い、高カルシウム血症や腎石灰化、腎機能障害に注意が必要であり、血中カルシウム、リン、尿中Ca/Cr (0.3未満)、腎エコーなどをみて投与量を調節する。骨端線閉鎖以降は、投与必要量は減少する。
 成人後は、骨軟化症による骨痛予防のため、少量の活性型ビタミンD製剤単独で治療を続けた方がよいといわれる。身長や骨変形の予後を改善するためには、早期治療が有用であり、本症の親から出生した児では、乳児期より治療するとよいといわれる。下肢の変形に対しては、装具が有効とされるが、変形が十分改善しない例では、骨切り術を行うこともある。

参考文献

1) Kitanaka, S. et al. Inactivating mutations in the 25-hydroxyvitamin D3 1α-hydroxylase gene in patients with pseudovitamin D-deficiency rickets. N Engl J Med 338, 653-661, 1998.

2) Hughes, M.R. et al. Point mutations in the human vitamin D receptor gene associated with hypocalcemic rickets. Science 242, 1702-1705, 1988.

3) The HYP Consortium. A gene (PEX) with homologies to endopeptidases is mutated in patients with X-linked hypophosphatemic rickets. Nat Genet 11, 130-136, 1995.

4) The ADHR Consortium. Autosomal dominant hypophosphataemic rickets is associated with mutations in FGF23. Nat Genet 26, 345-348, 2000.

5) Shimada, T. et al. Cloning and characterization of FGF23 as a causative factor of tumor- induced osteomalacia. Proc Natl Acad Sci U S A 98, 6500-6505, 2001.

6) 北中幸子 遺伝性くる病.小児疾患診療のための病態生理 小児内科35増: 576-581, 2003.

7) 北中幸子 ビタミンD欠乏性くる病とビタミンD依存性くる病.小児疾患の診断治療基準第3版 小児内科38増刊: 188-189, 2006.

(MyMedより)推薦図書

1) 五十嵐隆 編集:小児科学 改訂第9版,文光堂 2004

2) 衞藤義勝 著、Richard E.. Behrman・Robert M. Kliegman・Hal B. Jenson・五十嵐隆・大澤真木子・河野陽一・森川昭廣・山城雄一郎 編集:ネルソン小児科学 原著第17版,エルゼビア・ジャパン 2005
 

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