腸管多発性ポリープ - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

腸管多発性ポリープ(ちょうかんたはつせいぽりーぷ)

Gastrointestinal polyposis

執筆者: 正木 忠彦

Cronkhite-Canada症候群

( Cronkhite-Canada Syndrome)

概要

 1955年にCronkhiteとCanadaにより、消化管ポリポージスに皮膚色素沈着、爪甲の萎縮、脱落、脱毛を呈する2症例が報告された。2002年末までに387症例の報告がみられる。病因は不明であり、有名なMorsonの大腸ポリープの分類では、非腫瘍性・その他の項に分類されている。

表1 大腸ポリープの分類


 まれに悪性化の報告がある。Yashiroらによると、2002年末までの387症例のうち50例(13%)に消化管悪性腫瘍が合併しており、その内訳は大腸癌31例(8%)、胃癌19例(5%)であった。
 

病理・病態

 Cronkhiteらの最初の報告ではポリープの組織像が腺腫性と記載されているが、その後の症例の集積から、ポリープを構成する腺管に異型性はなく、腺管の嚢胞状拡張、間質の増生・浮腫および炎症細胞浸潤が特徴であることから非腫瘍性に分類されている。



 これらの組織学的所見は後述する若年性ポリープに類似するが、Cronkhite-Canada症候群ではポリープ周囲の平坦な粘膜にも同様の所見がみられることから、病態が彌慢性であることが特徴といえる。



 またポリープの一部に腺腫性腺管が混在していることが以前から指摘されている。近年Yashiroらは本症候群に合併した大腸癌31症例を詳細に検討し、組織像の再検が可能であった25症例中10例(40%)において大腸ポリープ内に鋸歯状腺腫(serrated adenoma)の所見がみられたとしている。これらの腺腫性腺管から癌が発生する可能性が高いと考えられ、本症候群は癌の高危険群に属すると考えていた方がよい。

臨床症状

 50歳、60歳台に好発する非遺伝性の疾患であり、わが国では男性に多いとされている。ポリープは消化管全域にわたり存在するが、93%は胃・大腸にみられる。下痢(96%)、脱毛(94%)、爪変化(94%)、色素沈着(72%)、食欲不振、全身倦怠、体重減少(37%)、味覚異常・口渇(40%)などの症状を呈する。

検査成績

 消化管造影検査では、胃では巨大趨襞様(Menetrier病類似)所見、大腸では粘膜は浮腫状で隆起は小さく密生型の大腸腺腫症と似た所見を呈する。内視鏡検査では、ちょうど“いくら”をまき散らしたような橙色の半球状隆起が多発している。



 小腸病変の検出にカプセル内視鏡の有用性が近年報告されている。

治療

 内科的治療が優先する。高カロリー輸液によって低栄養状態を改善させる。副腎皮質ステロイドの投与が有効との報告がある。胃・大腸癌を合併した場合には、その部位に応じた根治術を行う。

Peutz-Jeghers症候群

(Peutz-Jeghers Syndrome)

概要

 Peutz(1921)によって初めて報告され、Jeghers(1949)によって詳細にまとめられた遺伝性の皮膚粘膜色素沈着を伴う消化管ポリポージスであり、優性遺伝形式をとる。性差・人種差はなく、出生数120000人当り1例の確率で発生する。ポリープの好発部位は小腸(空腸>回腸)であるが、胃、大腸にも発生する。ポリープの数は大腸腺腫症のように多くはなく、通常10の単位である。大腸、胃、小腸、乳房、肺、子宮、卵巣、膣、精巣などにおける悪性腫瘍の合併が報告されている

病因

 1997年から1998年にかけてlinkage analysisにより、本症候群が19p13.3に位置しserine/threonine kinaseをコードするLKB1(STK11)のgermline mutationによって引き起こされることが明かとなった。この遺伝子に異常がおこると、上皮細胞の極性(polarity)や発育にみだれが生じる

病態

 ポリープの外見はごつごつした感じ(八つ頭状と形容される)であり


粗大顆粒状、分葉状で有茎のことも無茎のこともある。組織学的には、粘膜筋板の樹枝状増生とそれに伴った腺管の増生、延長がみられ、過誤腫に分類されている。



 通常は腺管に異型性はみられない。しかし最近になって、本症候群の大腸ポリープの癌化例が報告されるようになった。組織学的にはポリープの一部に腺腫性変化が生じ、その一部が癌化したと考えられている。

臨床症状

 口唇や指に黒褐色調の色素沈着が認められることが特徴である。





 通常色素沈着がポリープ発生より先行して認められる。年齢とともに色素沈着の濃度・数が増してくるが、40歳以降になると消退することもある。したがってポリポージスの診断がついた時点で色素沈着が認められない症例があるということで、詳細な病歴の聴取が不可欠である。臨床症状としては、消化管出血、貧血、腹痛、腸重積などを反復する。

検査成績

 内視鏡検査で表面粗大顆粒状、分葉状で有茎ないし無茎性のごつごつした感じのするポリープが認められる。ポリペクトミー標本の病理学的検査で、粘膜筋板の樹枝状増生とそれに伴った腺管の増生、延長がみられることより過誤腫と診断される。

治療

 大腸ポリープ、胃ポリープは内視鏡的ポリペクトミーで対処できる。腸重積の原因となる小腸ポリープは手術的切除の適応である。しかし腸切除を反復することは短腸症候群の原因となるので避けるべきであり、腸切開・局所切除により対処すべきである。

予後

 本症候群は消化管を含む他臓器癌合併の高危険群であるので、定期的な全身のチェックが必要である。サーベイランスの間隔・方法に決まったものはないが、2年に1度は消化管内視鏡検査、腹部超音波検査、乳房・子宮(女性)、精巣(男性)の診察などを行うべきである。

過形成性(化生性)ポリープおよびポリポージス

( Hyperplastic(Metaplastic) polyps and polyposis)

概要

 正常腺管の過形成によって生じる小ポリープで、老人に多発する。腺管の嚢胞性拡張(cystic metaplasia)と鋸歯状所見(saw-tooth appearance)がみられることから、化生性ポリープ(metaplastic polyp)とも呼ばれる。一般的には、腺腫とは異なり癌とは関係のない病変と考えられている。「表1

 通常5mm以下の白色調の小隆起で、S状結腸から直腸にかけて多発してみられる。一方、S状結腸より口側の結腸に過形成性ポリープが多発してみられる病型を過形成性ポリポージスと呼ぶが、これは癌化の高危険群と考えられている。

病理・病態生理

 過形成性(化生性)ポリープの隆起を形成する腺管は分岐のほとんどない延長した腺管であり、腺管腔は正常腺管より拡張している。核異型は認められない。腺管の上半部に鋸歯状の凹凸(saw-tooth appearance)がみられるのが特徴である。



 腺管全体にわたり杯細胞数が通常より減少している。オートラジオグラフィーを用いた研究によると、ポリープを構成する腺管の細胞は正常細胞に比して過成熟(hypermaturation)の状態にあるという。

臨床所見

 孤発性の過形成性(化生性)ポリープが出血や腹痛などの臨床症状を起こすことはない。過形成性ポリポージスが始めて記載された1980年代には癌化とは無関係な疾患単位と考えられていたが、その後大腸癌を合併する症例があいついで報告されるようになった。最新版のWHO分類(2000)では過形成性ポリポージスを以下のように定義している。

(1)少なくとも5個の過形成性ポリープがS状結腸より口側結腸に見られ、その内の2個の最大径が10mmより大きい症例。

(2)一親等に過形成性ポリポージス患者を持ち、S状結腸より口側結腸に過形成性ポリープを有する症例(ポリープの個数は問わない)。

(3)30個以上の過形成性ポリープが大腸全域にわたって存在する症例(ポリープの大きさは問わない)。

 この定義に従ったLageらの集計によると、実に過形成ポリポージス14症例中6例(43%)に大腸癌の合併が見られたという。この14 例について癌以外のポリープの組織像をみてみると、過形成性ポリープ単独は3 例のみで、他の11 例では腺腫,鋸歯状腺腫あるいはmixed polypが合併していた。鋸歯状腺腫(serrated adenoma)あるいはmixed polypというのは、1990年代に初めて提唱された疾患単位であり、過形成性ポリープと腺腫成分が共存する病変である。これらの病変が過形成性ポリポージスの癌化に深く関与する可能性が示唆されている。

検査所見

 内視鏡検査では、通常5mm以下の大きさで表面平滑で光沢のある白色調の隆起として認められる。孤発性のものは通常S状結腸から直腸にかけて認められる。まれには1cm大に達するものがある。



 加齢とともに頻度が増加する。過形成性ポリポージスでは、上記と同様なポリープがS状結腸より口側結腸に多発して認められる。

鑑別診断

 臨床的には小さな腺腫との鑑別が問題となる。内視鏡的には過形成性ポリープは光沢があり白色調であるのに比し、腺腫はやや赤みがあり光沢を欠くことからある程度の鑑別は可能であるが、小さな病変では必ずしも容易ではない。そのような場合には、hot biopsyによって診断と治療を同時に行うとよい。

治療

 孤発性の過形成性ポリープは放置してさしつかえない。

 問題は過形成性ポリポージスの場合である。悪性化のリスクが高いことから大腸全摘を早期に勧めるべきか、定期的に経過観察(サーベイランス)すべきかは未解決の問題である。

過誤腫性深在性ポリープ

( Inverted hamartomatous polyps)

概要

 粘液の貯留した嚢胞が粘膜下に単発ないしは多発する疾患で、大部分は肛門縁から10cm以内の下部直腸にみられるが、大腸全域に多発してみられることもある。表面は正常の大腸粘膜に被われるが、びらん・潰瘍を形成することもある。排便時に過剰にいきむstrainerにみられる直腸孤立性潰瘍症候群solitary ulcer syndrome of the rectumの隆起型、直腸粘膜脱症候群mucosal prolapse syndromeなどと同じ範疇に含まれる疾患と考えられる。深在性嚢胞性大腸炎colitis cystica profundaと呼ばれることもある。

病理・病態生理

 粘膜下に最大径2cmまでの粘液の貯留した嚢胞を認める。嚢胞は正常の円柱~立方上皮に裏打ちされることが多いが、上皮成分が消失して粘液のみが粘膜下層に貯留していることもある(mucus lakeと呼ぶ)。嚢胞は通常粘膜筋板の間隙を通して消化管の管腔と交通している。浸潤癌と誤診しないように注意しなければならない。随伴所見として粘膜固有層にコラーゲンの増生や平滑筋繊維の増生を認めることも特徴的である。粘膜筋板の肥厚、潰瘍形成、急性ないし慢性炎症所見、偽膜形成、腺管配列の変形なども認められることがある。本症の発症機序としては、上記の病理所見が直腸孤立性潰瘍症候群solitary ulcer syndrome of the rectumの隆起型や直腸粘膜脱症候群mucosal prolapse syndromeに類似していることと後述する臨床症状の類似性から、何らかの理由で生じた粘膜障害の修復過程において粘膜上皮の粘膜下層への過増殖、浸潤がおこり嚢胞形成にいたると推測されている。

臨床所見

 144例のcolitis cystica profundaを集計したGuestらの報告によると、単発性が123例と大部分を占め、年齢は4歳から76歳(中央値30歳)と広く分布し、性差は認められていない。臨床症状としては、下血(68%)、粘液排出(43%)、下痢(27%)、テネスムス(13%)、腹痛(12%)、直腸痛(9%)などがみられた。多くの患者が排便困難感を訴えるという。

検査所見

 直腸鏡検査では、主に直腸前壁側に粘膜の浮腫、発赤、潰瘍形成、顆粒状変化に伴ってポリープが認められる。粘液が嚢胞から排出される所見がみられることもある。直腸内腔の狭窄も認めることがある。注腸検査では、粗造な直腸粘膜、Houston弁の肥厚、潰瘍形成、ポリープないし腫瘤形成を示唆する陰影欠損像、直腸狭窄などが認められる。合併する直腸脱の検出には排便造影が有用である。

鑑別診断

 内視鏡や注腸所見から癌との鑑別がもっとも重要になる。内視鏡下の生検では粘膜のみが採取され、粘膜下の病変が正確に評価できないことがありうる。本症の可能性がある場合には、まず外科的な局所切除を選択すべきである。早まって直腸切断術を行うようなことがないように心すべきである。

治療

 サルファサラジン、ステロイド、抗生物質の投与などは効果がない。緩下剤の投与やいきみを避けるなど排便のコントロールにより、症状の軽減はある程度は可能である。症状が高度な場合には、外科的に局所切除を行う。

 直腸脱が併存する場合には外科的治療を考慮するが、術式は100以上も報告されており一定の見解はない。

若年性ポリープおよびポリポージス

(Juvenile polyp and polyposis)

概要

 幼児、小児にみられる消化管ポリープの中でもっとも頻度の高いポリープであり、直腸に好発し下血が主症状である。嚢胞状に拡張し粘液を満たした腺管が浮腫状の間質の中に散在しているが、腺管上皮に異型性はなく過誤腫に分類されている。「表1」

病因

 若年性ポリポージスでは50~300個のポリープがみられ、常染色体優性遺伝形式をとると考えられている。最近になって若年性ポリポージスの原因遺伝子として、MADH4/ SMAD4/ DPC4とBMPR1Aのgermline mutationが同定された。若年性ポリポージスは癌化の高危険群と考えられている。

病理・病態

 嚢胞状に拡張し粘液を満たした腺管が浮腫状の間質の中に散在しているが、腺管上皮に異型性はない。



 ポリープの表層上皮は脱落しびらんを生じている。間質には炎症細胞浸潤が認められる。したがって若年性ポリープは肉眼的に発赤が強く出血しやすい。若年性ポリポージスでは、一部に腺腫性変化を伴う若年性ポリープや腺腫が併存することがまれでないことが報告されている。このようなポリープが癌化する可能性が示唆されている。

臨床所見

 若年性ポリープの好発年齢は2~4歳で、直腸に好発する。下血が主症状(88~100%)で、肛門からのポリープ脱出もよくみられる症状である(17~62%)。一方、1)大腸に5個以上認められる、2)消化管全域に多発する、3)若年性ポリープの家族歴陽性例では個数によらない、のどれかを満たせば若年性ポリポージスと診断できる。若年性ポリポージスの平均年齢は18歳と若年性ポリープよりやや高年齢である。

検査所見

 大腸内視鏡検査で直腸に発赤の著明な表面平滑なポリープを認める。



 大多数は単発である。若年性ポリポージスの肉眼所見も孤立性の若年性ポリープと大差ない。

治療

 孤立性の若年性ポリープの治療の目的は、出血や脱出などの症状を取ることであり、直腸鏡または内視鏡を介して摘除すればよい。若年性ポリポージスには癌化のリスクがあるが、大腸全摘を行うべきか内視鏡的に経過観察するかについては一定の見解はない。

参考文献

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(MyMedより)推薦図書

1) 田中信治 編集:大腸腫瘍診断 (症例で身につける消化器内視鏡シリーズ),羊土社 2008

2) 松川正明 監修、長浜隆司・山本栄篤・中島寛隆 編集:消化器疾患の臨床分類―一目でわかる分類と内視鏡アトラス,羊土社 2008

3) 高木篤 著:腸にやさしい大腸内視鏡挿入法,医学書院 2005

4) 重野佐和子 著、赤須孝之 医学監修:大腸がん・大腸ポリープ再発予防のおいしいレシピ,法研 2007
 

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