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Internal Hemorrhoid
執筆者: 松島 誠
肛門科疾患の中で頻度の高い疾患で、肛門科受診者の半数以上を占めさらに無症状~軽症のものまで含めると中高年者のほとんどに認められともいわれている。肛門の内側や外側に腫れや弛み、しこりができてくるもので出血や痛み肛門部の脱出などの症状をきたす。痔核はそのできた位置により内痔核と外痔核に分けられる。肛門の歯状線より奥の直腸粘膜側のものを内痔核、歯状線より外側で肛門管上皮に覆われた部位にできるのが外痔核である。
痔核の病態は、肛門の閉鎖に役立っているanal cushion という正常な構造が排便時のいきみなどの日常生活の中で徐々に大きくなってきたものと考えられている。肛門の皮膚や粘膜のたるみ、その下にある血管の鬱血やそれを取り巻く結合組織の緩みや断裂によってanal cushionが肛門の外へ滑脱するようになり、出血や脱出するようになる。このような変化は便秘や下痢などの排便習慣や、日常の仕事・運動、さらには肛門周囲の構造的な差異などが関連して起きるものと考えられ発症の積極的な予防は困難と考えられる。
内痔核の出血は紙につく程度のものから便器に滴下するものまでさまざまであるがほとんどが排便時のみに見られる。内痔核が肛門の外に脱出したままであると排便に関係なく出血や粘液による汚れがみられる。内痔核の存在する歯状線より奥の直腸側には痛覚神経が分布していないため基本的に痛みはないが、脱出したまま嵌頓状態になったものや痔核が原因で裂肛を合併した場合は強い痛みをきたす。脱出は3度以上の大きさに成長すると、排便時に外へ押し出され指などを使って中に押し戻さなければならなくなる。さらに大きくなったものでは歩いたり咳をするだけで肛門外に脱出する。
内痔核はその大きさと症状により以下のように分類される。
1度:内痔核の血管は軽度に膨らみ、排便時に出血することがある。
2度:排便時に肛門外に脱出するが、排便後自然に肛門内へもどる。
3度:排便時に肛門外へ脱出し、指などで肛門内に押し戻さなければならない。
4度:排便時以外でも脱出する。または戻すことができない。
外痔核には慢性的に経過したものと、急に肛門周囲の血管内で血栓を作った血栓性外痔核とがある。慢性的なものは特別なことがない限り無症状の皮膚のたるみや隆起である。血栓性外痔核は便秘や下痢などの後に急な痛みと腫れを伴っておこり、肛門周囲の押し戻すことのできない丸いしこりや腫れとして触れる。
肛門部に指を挿入して行う直腸肛門指診と、肉眼で観察する視診で診断する。内痔核は通常指診では触れることが難しいので、肛門鏡を使用して直接観察することでより正確に診断できる。排便時と同じようにトイレでいきんで脱出してくる内痔核を確認する方法もある。外痔核は視診だけで診断可能である。
直腸癌、肛門癌、悪性黒色腫、直腸脱、慢性裂肛、など肛門周囲の疾患
出血や疼痛の症状は肛門衛生と排便の調整、軟膏や座薬による薬物治療を主とした保存的治療でほとんどの場合軽快または治癒させることができる。3度以上の内痔核は注射または手術による治療が必要となってくる。
1. PAO注射:
外来で直接内痔核に注射する方法で、止血効果が高い。痔核を消滅させる作用はない。
2. ALTA(ZIONE®)注射:
腰椎または局所麻酔を行って内痔核に注射する方法で、4段階注射法に従って行われる。痔核の根治も期待できるが、現時点で投与後5年以上の長期的な経過観察は行われていない。
1. 結紮切除法:
現時点で痔核根治治療のスタンダードと考えられている方法で、機能面の障害がなく再発がほとんどないこと、ほぼ完全に通常の肛門の形に戻せるなどの利点があるが、手術手技の習得に充分な経験を要することや術後ある程度の安静や入院などの生活上の制限が必要であることが問題点として挙げられる。
2. 結紮術:
内痔核の粘膜成分のみを小さな輪ゴムで縛り、壊死させて脱落を図る方法で、肛門側から行う方法と内視鏡を使用して行う方法とがある。
3. PPH:
脱出した内痔核を直腸内に引き上げ固定する方法で、術後の疼痛は少なく日常生活への復帰も早期にできる。全周性に脱出する内痔核や粘膜脱には画一的な効果が期待できるが適応かどうかを充分に考慮して行う。
痔核の治療における考え方:3度以上の内痔核は自覚症状もはっきりしており手術の適応となるが、それを2度以下の大きさに縮小させれば脱出症状を消失軽快させることができるといえる。合併症などがあって根治手術の困難なケースでは一時的な症状の改善を期待して縮小のための治療を選択する場合もある。
外痔核は慢性的な皮膚の弛みであるので、気にならなければ特別に治療しなくてもよい。徐々に大きくなって不快さなどが気になるようになった時は外科的に切除する。
血栓性外痔核は肛門皮下の血管内に血栓ができたもので、3~4日の保存的な治療で初期の痛みや腫れは軽快するがたくさんの細かい血栓や大きな血栓ができたものでは外来で切除する。
痔核は正常な肛門の構造が少しずつ大きくなって症状をきたすようになったものでそれ自体が癌化や悪性化することはない。通常の生活の中で徐々に大きくなっていくと考えられる疾患だが、不便さや不快さが持続するようなら積極的に治療する。日帰り手術やさまざまな治療方法があるので充分に検討して最も適切な方法選んで治療をおこなう。
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