腹壁破裂、臍帯ヘルニア - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

腹壁破裂、臍帯ヘルニア(ふくへきはれつ、さいたいへるにあ)

Gastroschisis, Omphalocele

執筆者: 石田 和夫

概要

 出生時に臍帯の中に腸管などの腹腔内臓器が脱出していたり 臍帯の脇から内臓が脱出している状態。多くは出生前の超音波で診断されるが、出生時に気付かれることもある。

病因

 胎生(妊娠)10週ころ胎児期臍帯内にあった腸管が腹腔内に完全に戻ることができないままに出生に至った状態。あるいは腹壁の臍輪が形成される過程で最終的に完全に閉鎖されずに腹腔内臓器が脱出したまま出生に至った状態。

病態生理

 臍帯ヘルニアでは臍帯の中に腸管や肝臓が脱出している。ときに臍帯が破裂しその外に臓器が脱出している場合もある。

 脱出臓器が臍帯の中央にあるものが多いが、上部か下部かの特殊型もある。多くは腹腔の容量が減少している。

 腹壁破裂では臍帯は正常であり、通常臍帯の右に欠損孔がある。 子宮内で腸管が脱出しているため腸管は浮腫、肥厚し、時に膿苔が付着している。

[臨床生理]
 臍帯ヘルニアでは50~80%に合併奇形を有する。心大血管奇形、染色体異常の合併は治療成績に大きく関与する。

 腹壁破裂では合併奇形は比較的少ないが、腸管の状態により短小腸となり治療に難渋することもある。

臨床症状

[臨床症状・診断]
臍帯ヘルニア



腹壁破裂



 出生時の外観で診断は容易である。Body Stalk Anomaly(強度の脊柱側彎、四肢異常、腸管異常、肺低形成、重症心奇形など合併)や総排泄腔外反(膀胱が反転し二分され、中央に回盲部が反転し腹壁に露出している状態)やCantrell症候群(正中上腹壁欠損、心臓脱、心内奇形)など特殊型は特徴的な外観を呈する。

 腹壁破裂では臍帯が正常ゆえ臍帯ヘルニアとの鑑別は容易である。腸管が胎児期に羊水中に露出して場合は腸管は浮腫・肥厚し表面に膿苔様の付着物を有す。

治療

 出生前診断がなされた場合は、出生後直ちに治療ができる施設での外来通院、出産が望ましい(母体搬送)。

 分娩方法については腸管が羊水中に脱出している例や脱出が著明な場合は帝王切開が選択される。

 出生後の管理が極めて重要である。

 すなわち(1)保温(2)消化管減圧(3)清潔である。

・消毒の上乾いたガーゼで巻きサランラップ™などで覆う。
・胃カテーテルを挿入し減圧をはかる。
・浣腸し胎便を排出させる。

 出生直後の患児にとって高度の低体温はアシドーシスの原因となり予後を大きく左右する。搬送で来院時に低体温があれば、患児を清潔な生食水で温浴させる。点滴を確保し抗生剤を含む輸液を開始する。手術前に超音波検査による心大血管奇形合併の診断を行う。全身のチェックを行い低体温が改善されたら、早期に手術を計画する。その緊急度は可及的早期のレヴェルである。

 初回手術で臓器を腹腔内に還納させ腹壁を閉じることができる場合と、何段階かに分けて閉鎖する(多期的手術)場合がある。腹壁閉鎖が安全に可能かどうかは胃内圧、膀胱内圧、呼吸終末二酸化炭素濃度、中心静脈圧などが指標とされるが、明瞭な基準はない。術中の呼吸状態や腹壁の緊張、臓器損傷の可能性の有無により判断される。

 段階を踏んで行う場合(多期的手術)、人工布(種々の材質、形状のものが用いられる)を腹壁に縫合固定し臓器を覆い、その後に7日から10日かけて病室で人工布を縫縮し臓器を腹腔内に戻し最終的に全身麻酔下で閉鎖する。局所麻酔下に人工布を皮膚に縫着し段階的に縫縮していく方法もある。

 周術期は感染予防と胃腸管減圧と栄養管理が重要である。

 術後管理では、元来もつ肺低形成例や腹圧上昇により、人工換気療法が必要となることが多い。また短小腸例では長期にわたり栄養管理が行われる。非破裂性臍帯ヘルニアで重症合併奇形を伴う例では保存療法が行われる。すなわち臍帯に2%マーキュロクロム、三色素(400倍ゲンチアナブルー、1000倍アクロフラビン、400倍ブリリアントグリーン)、ポピドンヨードなどを塗布し瘢痕化させる方法がある。

予後

 手術可能例では生存率70~80%と良好である。死亡原因の多くは重症の合併奇形、低出生体重によるが、治療中の感染症、短小腸は重篤な合併症を起こす危険がある。

最近の動向

 殆んどの例が出生前診断され計画的に分娩され、手術直後の管理が適正に行われ成績は向上している。

 手術では人工布の工夫で安全を期した二期手術が行われる傾向である。また臍を可及的に保存し治療後の創の整容性を図る工夫がなされている。

(MyMedより)推薦図書

1) 岡田正 著:系統小児外科学 第2版,永井書店 2005

2) 岡田正 監修, 伊藤泰雄・福澤正洋・高松英夫 編集:標準小児外科学 (STANDARD TEXTBOOK)第5版,医学書院 2007

3) 桜井正児 著:小児アトラス (コンパクト超音波αシリーズ),ベクトルコア 2003
 

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