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最終更新日:2010.07.27

角化嚢胞性歯原性腫瘍(かっかのうほうせいしげんせいしゅよう)

Keratocystic odontogenic tumor

執筆者: 小宮山一雄

概要

 歯原性良性腫瘍の一つで、以前は歯原性角化嚢胞として知られていた。顎骨内で歯の萌出する領域に発現する。あるいは埋伏歯の歯冠に近接して出現することがある。通常は臨床的に無症状に経過し,歯の治療に際して行なうX線検査により発見されることがある。

 嚢胞に近接する歯の根尖病巣などから2次的な感染を起すと疼痛など炎症症状を示すことがある。本疾患は嚢胞壁に上皮塊や娘嚢胞がみられ,再発しやすく,局所浸潤性を示すことと、稀に続発性に扁平上皮癌が発生することから、2005年に改訂されたWHO分類では腫瘍性疾患として扱うこととなった。

 基底細胞母斑症候群(basal cell nevus syndrome: Gorlin-Goltz syndrome,常染色体優性遺伝)の一部分症状として本腫瘍が顎骨に多発性に生じることが知られている。

病因

 角化嚢胞性歯原性腫瘍の由来は、1) 歯堤またはMarassezの上皮遺残、2)口腔粘膜から伸長してきた上皮基底細胞と考えられている。

臨床症状

  • ・好発年齢・性差:いずれの年代にも発生するが20-30歳代に発生のピークがあり、男性に多い。
  • ・好発部位は下顎智歯周囲(下顎角部)だが、上顎骨または前歯部発生症例の報告もある。
  • ・局所浸潤性を示し、ときに軟組織へ波及する。
  • ・再発率が高い。
  • ・通常は無症候性で、顎骨の腫脹を契機に発見されることが多いが、二次感染例では疼痛を伴うことがある。

診断・鑑別診断

【X線】

  • ・多房性>単房性、類縁形、境界明瞭な骨透瞭像
  • ・周囲歯牙の傾斜
  • ・鑑別診断:静止性骨空洞、各種の歯原性嚢胞、単純性骨嚢胞および静止性骨空洞など顎骨内の透過性病変


【病理組織】
  • ・錯角化を呈する菲薄(6-8層に重層)で平坦な(上皮脚を欠く)腫瘍性重層扁平上皮に裏装される。
  • ・角化層は波状を呈し、柵状に配列する基底細胞を認める。
  • ・傍基底細胞層に核分裂像を散見する。
  • ・ときに上皮異形成に相当する組織像を示すが悪性転化はまれである。
  • ・嚢胞壁中に、同様の組織像を呈する小型の嚢胞を認めることがあり、娘嚢胞と呼ばれる。
  • ・正角化を示す顎骨の嚢胞性病変は再発傾向を示さず、予後が良好である。このような嚢胞性病変はWHO分類では角化嚢胞性歯原性腫瘍から除外されており、その取扱について議論されている。

治療

 局所浸潤性を示し、再発傾向が高いことから病変の外科的摘出が推奨されている。

予後

  • 完全に摘出されれば予後は良好である。嚢胞壁が残存すると再発する。
  • 未治療症例ではまれに続発性に扁平上皮癌が発生することが知られ、WHO分類ではPrimary intraosseous squamous cell carcinoma derived from keratocystic odontogenic tumourとして扱われている。

最近の動向

 癌抑制遺伝子の一つであるPTCH1(patched homolog 1)遺伝子の変異が基底細胞母斑症候群のみならず、角化嚢胞性歯原性腫瘍においても散発性にも報告されている。通常、PTCH1は腫瘍発生に関与するSMO (smoothened)と受容体複合体を形成し、SMOの細胞増殖活性を抑制している。PTCHにsonic hedge hog (SHH)が結合することにより、SMOの抑制が消失し腫瘍の発生・増殖が起こると考えられている。しかし,知見は十分でなく,腫瘍と見なすことに懐疑的な意見もある。

  • ・Sun LS, Li XF, Li TJ. PTCH1 and SMO gene alterations in keratocystic odontogenic tumors. J Dent Res. 2008 Jun;87(6):575-9.
  • ・Madras J, Lapointe H. Keratocystic odontogenic tumour: reclassification of the odontogenic keratocyst from cyst to tumour. J Can Dent Assoc. 2008 Mar;74(2):165-165h.

免責事項

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