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腸管(特に大腸)が著明に拡張し腸閉塞症状を呈するものの、明らかな機械的閉塞がない状態を指す。
Ogilvieが大腸癌の腹腔神経叢への播種によって引き起こされた本疾患を最初に報告したことから、様々な原因によって引き起こされる同様の状態がOgilvie症候群と定義されている。
急性に起こるものと慢性的に起こるものがあり、それぞれ急性結腸偽性閉塞症(ACSO)、慢性腸管偽閉塞症(CIPO)と分類され、両者は個別の疾患概念として考えられている。前者はOgilvie症候群に該当する。

(腸管偽閉塞症の分類)
特発性(5%以下)と二次性(95%以上)のものがある。
二次性のものは慢性腎不全や呼吸器・中枢神経・心疾患時に起こる。また、整形外科手術後や外傷後にも多い。

特発性は器質的閉塞や二次的に症状を引き起こす疾患がなく、腸閉塞症状を繰り返す。消化管の運動異常が原因で、ほとんどが散発的に起こるが、一部で家族性に発生し、いくつかの染色体異常が見つかっている。
二次性の原因として自律神経障害、腸管神経障害、腸管平滑筋障害、腸管神経筋混合性障害、薬剤などが挙げられる。

すべての年齢層に発生するが、特に60歳前後に多いとされ、性別では若干男性に多い(約60%)。
詳細な病態生理はわかっていないが、様々な因子による大腸運動機能を制御する自律神経系の異常バランス、すなわち、副交感神経系(腸管の収縮:右側結腸は迷走神経、それ以下はS2-4の仙髄に支配)の抑制、または交感神経系(運動の制御:腹腔神経叢と腸間膜神経節支配)の亢進によって引き起こされると考えられている。
すべての年齢層に性差なく発生する。
腸管筋層の肥大やコラーゲンへの置換、腸管筋叢、特に神経細胞の核内封入体に異常があるとされる。また、いくつかの報告では腸管筋叢の神経細胞数の減少と、広範な変性・崩壊像が確認されている。
急激なあるいは緩徐な腹部膨慢が認められる。手術後では通常は3~7日で、早いものでは2日以内に起こる。疝痛は約80%の症例に、嘔気は約60%の症例にみられ嘔吐を伴うこともある。約40%の症例では排ガス、排便が認められる。
腹部の圧痛が現れることは少ない。
打診では鼓腸を呈し、小腸から拡張した盲腸へ内容物を排出するため、聴診上高音の小腸蠕動音を聴取するが、外傷(後腹膜血腫)や代謝異常の場合、腸動音は聴取できないことが多い。
食道、十二指腸、小腸や膀胱にも障害を呈することがある。
著明な腹部膨満、腹痛、嘔気ならびに嘔吐を呈する。また、二次的な細菌異常増殖によって下痢が起こり、排便によって症状が軽快する。
発作の頻度や強度は様々であるが、多くの場合ある一定の間隔で症状の発現、消退を繰り返す傾向にあるが、長期間経過すると症状は持続性となる。
吸収不良と摂食の恐怖心から体重減少が認められる。
病変は基本的に大腸に限局するが、食道・胃・小腸・胆嚢・血管のほか、尿閉や水腎症など尿路系異常を呈する症例も認められる。
大腸の彌慢性に著明な拡張したガス像を認めるが典型的ではない。大腸襞は比較的保持されていて、小腸に液面像(air-fluid level)が見られることが多い。colon cut-off signは脾彎曲部やS状結腸部に認めることが多い(腸閉塞がないことの診断に有用である)。肝彎曲部にも見られることがある。
水溶性造影剤を用いるのが一般的で、機械性腸閉塞と偽性腸管閉塞の鑑別のために行われる。
注腸造影と同様に機械性腸閉塞との鑑別に有用であるが、ACPOに特異的な変化は認めない。
機械性腸閉塞の除外のほか、穿孔が疑われる場合の腹腔内遊離ガス像(free air)や腸壁嚢状気腫の存在診断に有効である。
C lostridium difficile の感染による中毒性巨大結腸症の除外診断として必要である。
air-fluid levelを伴った著明な腸管の拡張像を認める。しかしながら、患者の状態により立位で撮影することが困難である場合が多い。
機械的腸管閉塞のないことを確認すると同時に、拡張している腸管の範囲を同定することが重要である。
腸管壁の状態や外部からの圧迫の有無の検索に有用である。
十二指腸や上部空腸の機械的閉塞(特に上腸間膜動脈症候群)を除外するのに用いられる。
診断的および治療的に行われるが、一旦減圧しても効果が持続することはまれである。
二次的な原因を鑑別することと、電解質や微量元素および栄養状態の評価を行うことが重要である。
食道内圧、胃排出能測定、腸管輸送時間などの検査によりその他臓器の合併障害を検索する。また、排尿障害の見られる症例には排泄性尿路造影検査も必要である。
代謝異常を除外または補正する必要がある。
初期治療として補液、経鼻胃管および経肛門チューブによる腸管内減圧を行う。
薬物療法としてはシサプリド、消化管運動促進薬、ネオスチグミンなどを使用する。薬物治療が奏効しなかった場合、消化管穿孔が否定されれば、腸管前処置を省略して大腸内視鏡による減圧を行う(穿孔防止のため送気量を最小限にする)。
保存的治療が奏功しない場合や、腹膜刺激症状や全身状態から腸管の虚血や穿孔が疑われるあるいは切迫した状態と判断されれば早期手術の適応である。虚血や穿孔の合併のない症例では盲腸外瘻や結腸人工肛門を造設することによる腸管減圧処置を行う。一方、虚血や穿孔を合併した症例では、虚血部は切除し、この断端や穿孔部を人工肛門として挙上し、腹腔内洗浄を行う。

(急性偽性腸閉塞症の治療アルゴリズム)
二次的なものには原疾患の治療が優先される。
薬物治療として消化管運動改善薬(シサプリド・ドンペリドン・オクトレオタイド)が用いられる。
細菌増殖に伴う下痢に対しては抗生物質を投与する。
イレウス管や大腸内視鏡による吸引減圧が必要となる場合もある。
栄養障害のため、長期(在宅)の経静脈栄養が必要となる場合が約30%存在する。
保存的治療によって人工肛門造設が必要となる症例もある。開腹術や人工肛門造設の際には機械的腸閉塞のないことを確定した上で、腸管壁の全層生検を行うことにより、アミロイドーシス、全身性進行性硬化症、その他の腸管変性性疾患の鑑別および腸管壁内の神経叢を観察することも重要である。
(急性偽性腸閉塞症の治療アルゴリズム)
保存的に減圧が行われた後は約48-72時間で腸管運動は正常に復し、再発は少ない。
手術的に大腸の拡張が改善した症例では再発が起こることは少ないが、一部には人工肛門閉鎖不能症例が存在し、最終的に大腸亜全摘・回腸直腸吻合術が必要となる。
虚血や穿孔は盲腸径12cm以上かつ拡張を呈してからの期間が6日以上経過したもので合併しやすいとされ、全症例の3-15%に起こると報告されている。これらを合併した際の死亡率は40~50%である。
本疾患全体としての死亡率は約15%であり、その予後不良因子は(1)重症合併疾患、(2)高齢、(3)盲腸径12cm以上、㈬大腸拡張6日間以上、(4)虚血・穿孔の合併である。
薬剤での治療は一旦効果があっても、症状の再発を繰り返すことが多い。
イレウス管や大腸内視鏡による吸引減圧は一時的な効果のみであることが多い。
一般に難治性で、全体の予後は不良で死亡率は10~25%と報告されている。
1) 幕内雅敏 監修、杉原健一 編集:大腸・肛門外科の要点と盲点 第2版 Knack & Pitfalls,文光堂; 第2版版 2005
2) 高木篤 著:腸にやさしい大腸内視鏡挿入法,医学書院 2005
3) 伊藤美智子:ストーマケア (Nursing mook―Advanced nursing practice (15)),学研 2003
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