気管支喘息発作 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.30

気管支喘息発作(きかんしぜんそくほっさ)

attack of bronchial asthma

執筆者: 生井 良幸

概要

 小児喘息の定義はわが国のガイドライン(JPGL2005)において、次のように示されている。



「小児気管支喘息は、発作性に笛声喘鳴を伴う呼吸困難をくり返す疾病であり、発生した呼吸困難は自然ないし治療により軽快、治癒するが、ごく稀には致死的である。その病理像は、気道の粘膜、筋層にわたる可逆性の狭窄性病変と、持続性炎症およびリモデリングと称する初期変化からなるものと考えられている。臨床的には、類似症状を示す肺・心臓、血管系の疾患を除外する必要がある。」



(注) 呼吸困難とは、通常、自覚症状で定義される。しかし、乳児、幼児では自覚症状を表現することができない。したがって、ここで取り上げる呼吸困難とは、不快感あるいは苦痛を伴った努力性呼吸のことを指すが、自覚症状を訴えない喘息患児(以下喘息児)については不快感あるいは苦痛を推測させる他覚所見を認めるものを含めるものとする。

病因

 喘息の本態は慢性気道炎症であって、気道が過敏となり、種々の刺激により気道が閉塞し喘息発作が起こってくる。種々の刺激とは、アレルギー(ダニ、ほこり、ペット(特に猫)、カビなど)、刺激物質(タバコ、花火、線香、排気ガスなど)、感染(ウイルス、マイコプラズマ、細菌など)、運動、気候、心理的因子などである。

病態生理

 乳幼児においては客観的指標が得られにくいため、成人と同一視できるか否かの疑問も残されているが、小児期(乳児~青年期)においても 非発作時は気道の慢性炎症と理解され、気道リモデリングの存在が認められる。以下に病態の要点をまとめる。



気道炎症


 喘息は好酸球、マスト細胞、リンパ球などの活性化と気道粘膜障害を伴う気道の慢性炎症と考えられる。小児では、気管支生検は困難であるが、気管支肺洗浄液(BALF)や喀痰から、好酸球、リンパ球、マクロファージなどの細胞増多が証明され、呼吸中一酸化窒素(NO)が有意に上昇しており、気道炎症が喘息の基本病態であることを示唆している。喘息が慢性炎症性疾患であるという考え方は、喘息の診断、予防および管理にとって重要な意味を持ち、喘息治療管理におけるアレルゲンの回避と、基本治療薬として抗炎症作用を有する薬物の選択が炎症改善に役立つ。



リモデリング


 気道リモデリングは通常、気道上皮細胞障害、杯細胞化生、基底膜肥厚、粘膜層の慢性的腫脹、平滑筋肥大、毛細血管増生、気管支粘膜下腺過形成といった組織構成要素の変化を意味する。リモデリングは、気道炎症の遷延化に基づく結果なのか、炎症とはある程度独立した発症機序に基づくのか、どの程度早期から存在するのか、抗炎症治療による進行阻止・改善が可能か不明な点も多い。



気道過敏性


 気道過敏性の存在は、喘息の病態として特徴的である。気道炎症による気道上皮障害は、気道過敏性を亢進させる要因と考えられるが、気道炎症レベルと気道過敏性との間に相関性があるか否かについては、はっきりした結論は得られていない。



発作時の病態生理


 種々の程度の慢性炎症、リモデリングを有する喘息児の気道に後述する何らかの因子が作用すると、気道過敏性を持つ喘息患者の気管支は敏感にこれに反応し、臨床的に把握される喘息発作へと進展する。



 喘息発作時には発作強度の進展とともに種々の程度の呼吸困難を自覚し、努力呼吸(陥没呼吸、鼻翼呼吸、シーソー呼吸、起坐呼吸、などによって確認できる)、喘鳴(典型例では呼気相に強く聞かれる高調性の連続音で、笛声喘鳴と称される)、咳嗽、喀痰(感染を伴わなければ透明、泡沫状)、などの症状が観察される。



 急性増悪時の気道狭窄に関与する病態として重要な要素は気管支平滑筋の収縮、気道粘膜浮腫、気道分泌物増加の三者で、これらが相加的に作用して気管支内腔の狭窄をもたらし、換気を障害する。平滑筋収縮は最も主要な気道狭窄の要因である。



 喘息発作時のように胸腔内部に気道の狭窄がある場合は、呼気時に気道は周囲から圧迫されて狭窄の程度が増し、吸気時には周囲の陰圧に引かれてやや拡張する。このために典型的な喘息発作では呼気時の喘鳴が強く、また呼気相が延長する。また、吸気に比して十分に行われないために、肺内の含気量が増加して肺の過膨張をきたす。



 気管支は複雑に分岐しており、また分泌物の増加、貯留によって気道狭窄あるいは換気の障害は肺内の局所により不均一となり、換気血流比の不均等を生じ低酸素血症を悪化させる。



増悪因子


 気管支喘息の発作の誘因となるものは症例間でも、また一人の症例においても時に異なる。発作の誘因、悪化因子が常に特定できるわけではないが、増悪因子を見極めて、その対応策を講じることは重要である。



アレルゲン


 小児喘息の患者の大部分はアトピー素因を有しており、該当するアレルゲンとの接触は重要な発作誘発因子となる。吸入アレルゲンのうち、室内アレルゲンとしては室内塵ダニ、ネコ、イヌ、などの動物由来のアレルゲン、真菌類などが重要である。屋外アレルゲンとしては、花粉、真菌類、昆虫類がある。食物アレルゲンも誘因となることがある。



ウイルスなどによる呼吸器感染症


 従来考えられていた以上にウイルス感染が喘息発作の誘因となっていることが指摘されるようになった。RSウイルス、ライノウイルス、インフルエンザウイルスなどが関係する。インフルエンザワクチンがインフルエンザの罹患を予防し、喘息の発症、悪化を防ぐ可能性も考えられるが、予防効果を認めないという報告もある。細菌としては肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、百日咳などが増悪因子として働く。



屋外大気汚染


 交通の多い地域で増加する二酸窒素と浮遊粒子物質は、喘息患者の抗原に対する気道の反応性を亢進させることが報告されている。またオゾンなどのオキシダント汚染物質は、気道粘膜の透過性を高めることによって抗原の影響を増加させる可能性がある。



室内空気汚染


 現代の建築技術の進展により気密性が高まり、暖房器具や建材から発生する二酸化窒素などの窒素酸化物、ホルムアルデヒドなどの室内汚染物質が無視できない。



受動喫煙と予防


 タバコの煙には、4,500種類以上の化合物や汚染物質が含まれる。タバコ煙は粒子層と気層からなり、前者にはニコチン、アセトアルデヒド、シアン化水素、窒素酸化物などが含まれる。有害物質の含有量は、「主流煙」より「副流煙」のほうが高く、pH9前後のアルカリ性で粘膜刺激性も著しく高い。特に母親の受動喫煙に暴露された小児においてリスクが増大する。家族全員が禁煙すべきである。



食品、および食品添加物と予防


 アレルゲンとしての食品とは別に喘息の発症に影響を与えると考えられるものとして脂肪酸、マグネシウム、ナトリウムなどが挙げられる。ω-6系脂肪酸(リノール酸)に対して、ω-3系脂肪酸(αリノレン酸、EPA、DHA、など)には抗炎症作用があるが、喘息への臨床レベルでの影響に関して評価は確定していない。



 一般的な予防として、アトピー素因のある小児は、摂取食品のバランスに気をつけ、動物性脂肪の多量摂取や、不規則な食事を控えることが望ましい。食品添加物の中の亜硫酸塩が重篤な気道の過敏性を誘発し得る。



運動と過換気


 運動誘発性喘息(EIA)はすべての喘息患者に起こる可能性があるが、運動誘発性喘息が問題となる患者では喘息のコントロールが十分であるかどうか検討が必要である。気道よりも冷たく乾燥した空気を多量に吸入することにより、気道粘膜の冷却・再加温や水分喪失を引き起こし、気管支収縮が生じる。また過換気も運動と同様に増悪因子となる。



 予防としては、鼻呼吸、マスク着用を心がけ、運動前にはβ2刺激薬あるいはDSCGを吸入、あるいはロイコトリエン受容体拮抗薬を内服する。また、身体トレーニングや運動による継続的訓練などを組み合わせることが運動誘発喘息の予防になるが、きわめて激しい運動によって喘息の悪化や、ごく稀には喘息死の報告もあるので注意が必要である。



気象


 喘息発作と気象の変化には因果関係があることは知られているが、その具体的内容については確定されていない。前日と比較して5℃以上の変化があると発作がおきやすいとの報告がある。予防として、患者自身が日常生活の中で服装や冷暖房などの調節に注意を払う。



薬物と予防


 アスピリンやほかの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は成人喘息ではかなりの頻度で喘息発作を誘発するが、小児ではいわゆるアスピリン喘息は稀である。成人に達した喘息患者ではNSAIDsに関して詳しい問診を行い、その疑いがあれば服用を避ける。またこれらの薬物で重篤な増悪を生じる可能性があることを説明しておく。 β遮断薬は内因性カテコラミンのβ受容体を遮断し喘息発作を誘発する可能性がある。非選択的β遮断薬は、点眼薬も含めて使用すべきでない。



激しい感情表現とストレス


 激しい感情表現は換気亢進や低炭酸ガス血症を生じ、結果として気道狭窄を引き起こすため、喘息の発症増悪因子となりえる。また、ストレスが喘息の発症増悪因子として重要であることが知られている。喘息発症の早期から心身両面の診療を進め、不安・気分障害を伴う場合には適切な心理療法の併用により、心理社会的因子の解消を図る必要がある。



その他


 胃食道逆流現象、月経が喘息の増悪因子となっていることがある。合併する鼻炎、副鼻腔炎も喘息に影響する。

臨床症状

 発作の程度の判定が重要である。発作の程度は喘鳴の程度、陥没呼吸の程度、起坐呼吸やチアノーゼの有無など、臨床症状の把握によって判定される。主に呼吸の状態により小発作(咳嗽や呼気性の喘鳴を認め、陥没呼吸や呼吸困難は軽微で睡眠障害はほとんどなく日常生活は普通に行える)、中発作(呼気性喘鳴、呼気延長、陥没呼吸、明らかな呼吸困難がある。睡眠障害も認められる)、大発作(肩呼吸、鼻翼呼吸があり、呼吸困難は強度でチアノーゼを呈することもある)の3段階に分類される。

検査成績

発作時の換気障害については次のようである。



 中枢側気道の狭窄の状態はピークフローメーターによって評価できるが、末梢気道を含めた呼吸機能を評価するためにはフローボリューム曲線が望ましい。また換気の状態を評価するには血液ガスを測定する。血液ガス分析のpH、PaCO2は静脈血でも評価は可能である。発作強度の悪化に伴ってPaO2は低下するが、PaCO2は小発作、中発作ではあまり変化しないか、換気量の増大に伴って低下し、大発作から呼吸不全に進むにつれて肺胞低換気を反映して急速に上昇し、呼吸性アシドーシスを呈する。

診断・鑑別診断

 典型的な喘息発作の症状は、笛声喘鳴を伴う呼吸困難である。喘息発作時の呼吸困難は呼気性が主体であるが、症状が進んでくると、吸気性呼吸困難も合併してくる。このような症状を反復すれば、症候学的に喘息の診断をすることは比較的容易であるが、表1のような鑑別診断が必要である。乳児においては、喘息でなくても下気道感染に伴い喘鳴を呈することが通常に認められ、また、喘息であっても笛声喘鳴を示さないこともあり、さらに呼吸困難を努力性呼吸として他覚的に判断しなければならないので、この年齢における喘息の診断は必ずしも容易ではない。







病型


 喘息の病型はアトピー型と非アトピー型に分けられる。アトピー型は血清IgE値が高く、特定アレルゲン、とくにダニに対するIgE抗体を有するタイプであり、小児喘息の約90%はアトピー型であり、これは中高年喘息と大きく異なる点である。



乳児喘息


 確定された診断基準は存在しない。JPGL2005では「気道感染の有無にかかわらず呼気性喘鳴を3エピソード以上繰り返した場合に乳児喘息と診断する。ただし、エピソードとエピソードの間に無症状な期間が1週間程度以上あることを確認する」、とある。

治療

 小発作・中発作・大発作・呼吸不全の重症度の判定が重要である。医療機関の状況にあった対応を考える必要があるが、本稿ではJPGL2005を参考にした当院での対応について述べる。喘息発作管理の主要目標は、低酸素血症の是正、気流閉塞の早急な改善、症状の進行または再発の予防などである。来院時の臨床的重症度、初期治療の効果、喘息死に関連するリスクファクターの存在に基づいて治療する。









小発作、中発作


 短時間作用性β2刺激薬の吸入で開始する。20~30分毎に3回までのβ2刺激薬の吸入をする。3回行わなければ追加治療に進めないわけではない。1回目の吸入で反応が不十分であれば吸入を反復するが、発作状態が不変であれば、小発作は中発作の治療を行い、中発作であれば酸素投与と輸液とステロイド薬(静注)の治療を追加する。中発作の治療でβ2刺激薬の吸入にもかかわらず悪化するならば、入院治療を考える。



 2歳以上の患児では、これらの治療で無効あるいは2時間ほど実施しても反応不十分な場合には入院治療とする。



 2歳未満の中発作に対する治療は、β2刺激薬の吸入による効果が不十分で追加治療が必要な際は、原則入院治療とする。



 外来での治療で回復した患者に対して、発作が再発しないように帰宅後もβ2刺激薬の吸入、内服、吸入ステロイドなどを発作治まっても1週間は続けることと、帰宅後の悪化時の対応と再来院のタイミングを指導する。



大発作


 大発作の治療は原則入院で行う。β2刺激薬吸入反復、酸素吸入、輸液、ステロイド薬静注反復、イソプロテレノール持続吸入などを適宜組み合わせて同時に行う。



呼吸不全


 大発作の治療にくわえて、気管挿管、人口呼吸管理、イソプロテレノール持続吸入増量などを追加する。

予後

 喘息の予後については調査対象の喘息重症度や調査期間により異なるが、一般的に専門施設での長期予後は寛解率60~70%程度と推測される。喘息の重症度に関しては重症であるほど予後は悪い傾向にある。寛解が得られる年齢は10~18歳ごろに多く、寛解率は18~20歳でプラトーに達する。再発に関しては、思春期までに治癒していると再発の可能性は少ないが、この頃に治癒しなかった症例の多くは一時的に寛解しても再発をくり返す可能性が高い。

最近の動向

 日本の2005年版ガイドラインで、テオフィリンの使用に関して注意喚起が強調されており、臨床現場でのテオフィリン使用は激減している。しかし、それにより治療効果に大きな変化は見られていない。

参考文献

1) 森川昭廣、西間三馨、日本小児アレルギー学会 監修:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005,協和企画 2005

2) Nelson Textbook of Pediatrics、17th、W B Saunders Co

執筆者による推薦図書

1) 森川昭廣・西間三馨 監修:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2008,協和企画

2) 衛藤義勝 著:ネルソン小児科学 原著第17版,エルゼビア・ジャパン

3) American Heart Assoc 著:PALSプロバイダーマニュアル 日本語版,シナジー

4) Barbara Aehlert 著、宮坂勝之 翻訳:日本版PALSスタディガイド――小児二次救命処置の基礎と実践,エルゼビア・ジャパン株式会社

(MyMedより)推薦図書

1) 灰田美知子 著:気管支喘息の臨床,診断と治療社 2009

2) 医療者のための喘息とCOPDの知識,医学書院 2007

3) 灰田美知子 著:灰田美知子のぜんそくの最新治療―正しい知識と自己管理で発作を起こさない生活を (名医の最新治療),主婦の友社 2010

4) 山口泰 著:ぜんそくをコントロールする,保健同人社 2009
 

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