膜性増殖性糸球体腎炎 - MyMed 医療電子教科書

MyMed(マイメド)は、究極の医療電子教科書の作成を通じて、利用者のニーズにあった理想的な医療情報サイトを作ろうというプロジェクトです。

MyMed


このページを印刷
最終更新日:2010.11.30

膜性増殖性糸球体腎炎(まくせいぞうしょくせいしきゅうたいじんえん)

membranoproliferative glomerulonephritis

執筆者: 平松 美佐子

概要

 膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis:MPGN) は、病理組織学的にメサンギウム細胞と基質の増加と糸球体毛細血管壁の肥厚、二重化を特徴的な所見とする腎炎の総称である。1965年Westらが持続性低補体性腎炎として最初に報告したことに始まる。

 当初、組織学的には電顕所見よりType I II III に分類された。小児科領域では本疾患の多くは多くは原発性であるが、B型肝炎ウイルス関連腎症やIgA腎症の一部が本疾患と類似する病理所見を呈する。成人例は他にC型肝炎ウイルス関連腎症、膠原病、担癌状態他多彩な基礎疾患を有した二次性膜性増殖性糸球体腎炎がみられる。

 一般的な疾患概念としてのMPGNは、このような組織学的特徴を有し持続的低補体血症を呈する慢性進行性の原発性糸球体腎炎を指す。

病理組織所見

 MPGNは電子顕微鏡で高度密度沈着物質の存在部位によって、MPGNは3型に分類される。

 WHO分類(1995)では、I 型と III 型は原発性糸球体疾患のびまん性増殖性糸球体腎炎に分類され、mesangiocapillary glomerulonephritisと表記されている。

 II 型は代謝性疾患に分類され、独立した疾患としてdense deposit disease(DDD)として記載されている。

 I 型は電子顕微鏡にて、内皮下とメサンジウム領域にelectron dense depositの沈着がみられる点と糸球体毛細血管係蹄壁の基底膜と内皮細胞の間にメサンジウム細胞が進入する Mesangial interpositn)像が特徴的である。この所見が光学顕微鏡にて血管係蹄の肥厚、二重化像として観察される。蛍光抗体ではC3が血管係蹄壁に沿って連続性に沈着しfringe Patternを呈する。我が国ではMPGN全体の80~90%が I 型である。

 II 型は光学顕微鏡所見は I 型と基本的には同様であるが、メサンジウムと基質の増殖や二重化像の程度は I 型に比べ軽度である。電顕では糸球体基底膜のlamina densaにリボン状に電子密度の濃い沈着物が見られる。蛍光抗体法ではC3の沈着が著明で、免疫グロブリンの沈着は軽度である。我が国は欧米に比較して頻度が低くMPGN全体の10%程度である。 III 型は電顕糸球体基底膜の上皮下及び内皮下に沈着物がみられるものをいう。

 MPGN1型の上皮下の沈着物がみられるので、 III 型は I 型の亜型という考えかたもある。

病態

 特異な組織像と当初より注目された低補体に関する病態解明への検討がされてきたが、MPGNの病因はいまだ不明である。多くの患者でC3bBb(C3convertase)に対する自己抗体であるC3nephritic factor(C3NeF)が形成されalternative pathwayを活性化し、early compornentを活性化させずにC3を活性化させる。この時C3NeFは血液中でC5 Convertaseを形成しないのでC3は低下するがC5は低下していない。

 C3NeFは結果的に低補体の原因であり、補体の重要な働きである免疫複合体の可溶化などの処理能を低下させ、しかも自己抗体であるからそれ自体が免疫複合体になりうることも考えられる。さらに低補体血症と糸球体へのC3を初めとする補体成分や免疫グロブリンの沈着を認めることから主に補体系の異常を介して、発症、進展する疾患と考えられる。

 本症の患者のB細胞をEBウイルスにて腫瘍化するとB細胞はC3NeFを作り続ける事から、本症は何らかの自己免疫機序にて発症する疾患と考えられる。

 一方以前MPGMType II と分類されていたDense deposit disease が補体系のfactorH 遺伝子変異で発症することが知られ、動物実験を中心にfactorHの異常による補体活性の調節系の異常が腎炎発症と関連があるかもしれない。

臨床症状

 MPGNはすべての年齢層でみられ年長の小児にピークがあり、その発症様式、あるいは発見動機は多彩だが、我が国では学校検尿の普及により無症候性蛋白尿/血尿で発見される臨床的に軽微な症例が70%以上を占めている。その他急性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、急速進行性腎炎症候群で発症することも報告されていて、肉眼的血尿が10~20%程度認められる。

検査所見

 特徴的な検査所見は血清補体価の変動である。I型ではC3の低下が全経過を通じ90%以上の症例にみられる。多くの症例でCH50の低下が認められC1、C4 及びC5値の低下が30%に認められる。Dense deposit diseaseでは診断時のC3の低下あり、C3NeFの陽性率は高く、C1 、C4値はほぼ正常である。低補体の経過は、何らかの形で低補体血症となるものが約90%の症例にみられる。

診断基準

 確定診断は腎生検組織によりなされる。光顕,蛍光、電顕により表1にしめすように診断する。


表1. 膜性増殖性糸球体腎炎の診断基準

治療

 治療の原則はステロイド療法である。West等により経口プレドニン(PSL40mg/m2 日)の長期隔日投与の有効性が示された。長谷川、服部等はより早期の効果発現を期待して、初期治療としてメチルプレドニゾロン(mPSL)のパルス療法クール後プレドニン1mg/kgの隔日投与経口で行い、そこで再生検施行後治療効果を検討している。治療に対する反応性が良く、血清補体価の上昇、尿所見の改善を認める場合で、腎組織の改善も確認されればステロイドを漸減、中止も考慮する。尿所見継続、腎組織の改善の乏しい時はステロイドを継続して投与する。ステロイドが無効な場合には、免疫抑制剤(ciclosporin,Azathioprine,MMF) の併用、抗凝固療法,ACE阻害薬を併用している。 

予後

 かつては発症後10年で約50%が末期腎不全となる予後不良の疾患とされていたが、ステロイド治療により予後は飛躍的に改善している。我が国では学校検尿の普及により本症を早期に発見し早期治療を行うことができている事が予後を改善させている。

 長谷川等は1990年代に発症した I 型MPGNで末期腎不全に移行した例はないと報告している。 II 型MPGNは I 型と比較してステロイドの反応性が悪く、予後が不良であるとされる.近年focalMPGNや持続性低補体血症を示すメサンジウム増殖性腎炎の患者が報告されているが典型的なMPGNに移行する可能性があり早期にステロイドを開始される事が多い腎移植を行った際のMPGNの再発率は I 型で約30%であるが、 II 型では90%と高率である。 

最新の動向

 特発性MPGNは近年減少傾向にあり、あらたな知見はすくないが年代が推移する中での長期予後が明かになりつつある。 

(MyMedより)推薦図書

1) 坂井建雄 著, 河原克雅 著:カラー図解 人体の正常構造と機能〈5〉腎・泌尿器,日本医事新報社 1999

2) 三森明夫 著:膠原病診療ノート―症例の分析 文献の考察 実践への手引き,日本医事新報社 2006

3) 藤岡高弘 著:C型・B型肝炎の治療とケアQ&A,照林社 2007
 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

※ この記事に関するご意見をお聞かせください。


このページを印刷

診療科別


※ マイメドでは、疾患項目の追加、および最新情報をお知らせするためにメールマガジンを配信しております。ご希望の方は下記にメールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。
  なお、次の職業の方は、職業をご選択の上、メールアドレスを入力の上、送信ボタンを押してください。

メールアドレス: メールアドレス(確認用):
医療関係者の方はご選択ください: