閉塞性動脈硬化症(ASO) - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.02

閉塞性動脈硬化症(ASO)(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)

Arteriosclerosis Obliterans

執筆者: 重松 邦広 宮田 哲郎

概要

 閉塞性動脈硬化症(ASO)は下肢の慢性動脈閉塞症であり、その本態は粥状硬化による動脈閉塞である。近年、従来にまして重症症例が増加しており、虚血性潰瘍や安静時疼痛を呈する重症虚血肢症例が多くなってきた。また粥状硬化は下肢動脈のみを侵すわけではなく、重症症例では冠動脈病変・頚動脈病変の合併も認め、下肢ASOのみならず全身の動脈硬化性病変の治療を行わざるを得ないことも少なくない。2007年TASCIIが発表され、今後 evidenceに基づいた治療がworldwideに行われるものと期待されている。

病因

 動脈硬化すなわち粥状硬化病変(内膜肥厚、アテローム形成、石灰化)と2次的な血栓形成による末梢動脈閉塞を主体とする。このため、糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙がその背景とされる。

 ASOは下肢の病変とされるが、同時に全身の動脈が侵されており、冠動脈病変・頚動脈病変に加えて、大動脈、冠動脈、頚動脈、腎動脈その他腹部内蔵動脈にも同様の病変が認められることが多い。

 ASOの後発部位は、大動脈腸骨動脈、浅大腿動脈、下腿動脈の3領域であり、これらが複合すると重症化し、虚血性潰瘍や安静時痛を呈する重症虚血肢化する。

 糖尿病を基礎疾患とする場合には、Monckberg型とされる中膜の高度な石灰化を呈し下腿3分枝に病変を認めることが多い。

臨床症状

 従来からASOも含めた末梢動脈疾患ではこれまでFontaine分類(表1)による重症度分類が行われてきた。ASOは無症状から急激に重症化することは少なく、Fontaine分類の段階に従って徐々に症状が増悪することがほとんどである。

 軽症の場合、指趾の冷感、痺れ感(FontaineI度)のみを訴える。重症になるに従い、間歇性跛行(FontaineII度)、安静時痛 (FontaineIII度)や虚血性潰瘍(FontaineIV度)を呈する。FontaineII度では、血管の閉塞により血流が低下しているために運動によって増加したエネルギー需要が筋肉内の嫌気性代謝により補給され、蓄積した乳酸やその他の代謝産物が痛みを引き起こす因子となるとされている。 FontaineIII度では、運動していない安静時においても組織を維持するだけの血液供給が行われないために安静時痛を呈する。FontaineIV度症例では、創傷治癒を惹起するだけの血流が維持されていない状態であり、必ずしも安静時痛を呈する症例ばかりではない。

検査成績

 血液生化学検査においては、前述の背景疾患に付随する異常を認めるが、その他特別な異常を認めることは少ない。虚血性潰瘍を呈する場合には軽度の炎症所見を認めるが、潰瘍壊死部に細菌性感染が認められる場合にはその限りではない。また重症虚血肢症例において、CPK、Mb、GOT、GPT、LDHなどの上昇が見られる場合には虚血による組織壊死が示唆され、可及的速やかな加療が必要となる。

 非侵襲検査では、ABI(Ankle Brachial Pressure Index)が一般的に用いられる。0.9以上が正常とされるが、0.7程度まで低下すると間歇性跛行を呈する。一方潰瘍形成や安静時痛を呈する重症虚血肢では、通常0.4以下のことが多く、ABIが0であることも稀ではない。また糖尿病症例では、下腿動脈の石灰化のためにABIが測定できず、その代替検査としてtoe brachial pressure Index(TBI)が有用である。歩行時の血行動態を検討するには近赤外線分光法(NIRS)が有用であり、本検査も糖尿病の動脈石灰化の影響を受けない。

 安静時痛、虚血性潰瘍を認める場合には、SPP(skin perfusion pressure)が治癒の可能性を予測するのに有用である。SPPが40mmHg以上である場合には、保存的治療により潰瘍の治癒が得られることも多い。

 閉塞部位の確認や手術適応の決定には、画像検査が必須である。従来は、血管撮影を施行していたが、各種画像検査の進歩により、MRAやCT アンギオにてほとんどカバーできるようになった。足関節周囲へのdistal bypassの施行時には念のため血管撮影を施行することも多いが、MRAやCTアンギオで十分であることがほとんどである。前述のように動脈硬化性病変は全身に認められることから、腸間膜動脈や腎動脈などの内臓動脈の変化にも注意を払うべきである。全身の動脈硬化性疾患の検索に当たっては、周術期を含めた致死的な合併症を予防するためにも冠動脈疾患と頚動脈疾患に対する検査を必ず施行することが重要である。

診断・鑑別診断

 現在TAOは激減しており、末梢動脈閉塞疾患の大多数はASOであることから、上記の下肢虚血症状を認めた場合には、まずASOを疑う。40歳代までの若年者の場合はTAOを鑑別する必要があるが、60歳以上であればASOが強く疑われる。

 下肢の末梢動脈拍動を減弱もしくは消失を確認し、ABI(TBI)の測定を行う。低下している場合には上記の画像検査に進み、その閉塞状況を確認する。TAOの場合と異なり、中枢側から動脈壁の不整を認めると同時に石灰化を認めることが多い。糖尿病性の場合、特に下腿3分枝以下に高度な病変を認めることが多い。

 鑑別診断としては、TAO、塞栓症、膠原病に代表される血管炎が挙げられる。TAOは発症年齢ならびに画像検査により、塞栓症は不整脈の有無や画像検査により鑑別される。血管炎は末梢病変であることがほとんどであり、血液検査ならびに血管撮影により鑑別可能である。

治療

 前述の背景因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙など)を認める症例では、そのコントロールをまず行う必要がある。特に喫煙者の場合、禁煙なくして治療は成立しない。

 治療の統一ガイドラインとしてTASCIIが2007年改定発表された。間歇性跛行肢では、大動脈腸骨動脈病変の症例に対してはガイドラインにのっとって血管内治療または外科手術を行い、末梢型の場合には抗血小板剤を投与しつつ運動療法をまず行うことが推奨されている。薬物運動療法が無効時には血行再建術を考慮する。一方潰瘍や安静時疼痛を呈する重症虚血肢症例においては血行再建が可能な症例に対しては血行再建を、不能症例に対しては、切断もしくは薬物療法が薦められている。

 近年deviceの進歩もあり、血管内治療の適応病変が広がってきている。詳細はTASCIIを参照していただきたいが、概ね病変長の短い腸骨動脈もしくは浅大腿動脈病変は血管内治療で十分な成績が得られる。一方病変長の長い閉塞病変や膝した病変については外科手術のほうが安定した長期成績が得られる。外科手術のバイパスの5年開存率は大動脈大腿動脈バイパスで90%以上、大腿膝窩動脈バイパス(人工血管)ならびに膝下のdistal bypass(自家静脈)で70-80%、である。

予後

 TASCIIにおいて虚血肢の自然予後は詳述されており、重症虚血肢の場合1年後の生存率は75%でその内肢切断が30%で残りの45%が肢切断を免れる。一方非重症虚血肢では、5年後の転帰が 症状安定した跛行が70-80%、跛行の悪化が10-20%、重症虚血肢化5-10%とされている。重症虚血肢に陥る危険因子は、背景因子によっても大きく異なり、糖尿病4倍、喫煙継続3倍、脂質異常2倍、65歳以上2倍、ABI<0.75 2倍、 ABI<0.5 2.5倍とされている。

 生命予後は、冠動脈疾患や頚動脈疾患の罹患率が高いため、不良である。TASCの集計では末梢動脈疾患症例の死亡率は対象群と比べて25%高く、さらに重症虚血肢症例における5年生存率は約40%とされる。

(MyMedより)推薦図書

1) 松尾汎 編集:やさしい閉塞性動脈硬化症の自己管理,医薬ジャーナル社 2004

2) 寺本民生 著:コレステロール値が高いと言われたら読む本 (早わかり健康ガイド) ,小学館 2010

3) 桑島巌 著:高血圧の常識はウソばかり (朝日新書 (086)) ,朝日新聞社 2007
 

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