MODY - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.18

MODY(もでぃ)

maturity onset diabetes of the young

執筆者: 岩﨑 直子

概要

 若年(通常25歳未満)で診断され、肥満がなく、親や兄弟に糖尿病が認められる場合にはMODYというタイプの糖尿病が疑われる。MODYは一見したところ2型糖尿病や1型糖尿病と何ら変わるところはないため、診断までは通常の1型あるいは2型糖尿病として治療が行われている。しかし、MODYの最も重要な特徴は常染色体優性遺伝を示し、膵臓のβ細胞の機能不全によりインスリン分泌が障害されるという点である。常染色体優性遺伝とは、1種類の遺伝子の働きにより発症がほぼ規定されるような疾患を意味し、遺伝学的分類では単一遺伝子疾患に属する。

 日本糖尿病学会による「糖尿病の成因分類」(1999年)(表1)では、「III. その他の特定の機序、疾患によるもの」の中の「遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの、 (1)膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常」に分類されている。MODYの頻度は糖尿病全体の5%程度と推定されているが、ヨーロッパでのMODYの頻度は多く見積もって糖尿病全体の12%程度と報告されている。

表1 : MODYの原因遺伝子

病因

 MODYは糖代謝に関わる一種類の遺伝子の機能障害(遺伝子変異、遺伝子全体あるいは一部の欠失などによる)が原因となって糖尿病を発症する。原因遺伝子は今日までに6種類明らかにされているが、原因不明のMODYも存在する()。必ずしも遺伝子診断を行う必要はなく、診断基準を満たせば臨床的にMODYと診断できる。

 さらに詳しく説明すると、我々はすべての遺伝子を1組(2本)づつ有している。一方は父から受け継いだ遺伝子で、もう一方は母から受け継いだ遺伝子である(例外は性染色体に位置する遺伝子)。ところで、MODYで認められる遺伝子変異は通常ヘテロ変異であるので、患者は正常の遺伝子も1本有している(2本とも変異を認める場合はホモ変異という)。このように正常遺伝子を1本有しているにもかかわらず、その遺伝子機能が正常に発現されず、糖尿病を発症するしくみとして、次に述べる2つの説が知られている。本来100%の遺伝子産物が正常機能の発揮のために必要であるのに、遺伝子変異により産物が50%に減少し、その結果遺伝子の機能を喪失する場合(ハプロ不全)。また、正常遺伝子と変異遺伝子が50%づつ遺伝子産物を産生し、異常産物が正常産物を何らかの原因によって阻害するため、結果として遺伝子産物を欠く場合(優性阻害効果)。

病態生理

 MODYの病態は原因遺伝子の機能障害によってもたらされるインスリン分泌障害である。MODY2はグルコキナーゼという解糖系酵素をコードする遺伝子の機能障害が原因である。一方、MODY2以外のMODYはすべて転写因子をコードする遺伝子の機能異常が原因である。これらの転写因子は相互作用の結果、その下流に存在するMODY2を含む様々な遺伝子の発現を調節し、最終的にインスリン分泌が障害されて血糖が上昇する。

・MODY2  
 MODY2の病態生理に関して述べると、まずグルコキナーゼ遺伝子の変異によってグルコキナーゼ酵素活性が低下する(まれではあるが酵素活性が亢進する変異も報告されている)。その結果、MODY2患者の膵β細胞では血糖が110~145 mg/dl以上と、正常者よりやや高いグルコースレベルになって初めてインスリン分泌が開始される。また、空腹時血糖が100未満になることは稀である。つまり、インスリン分泌開始のセッティングレベルに異常が生じる。グルコキナーゼは肝臓でも発現しているのでMODY2患者では肝臓でのグリコーゲン合成が低下し、糖新生が亢進している。その結果、食後の高血糖がもたらされる。糖尿病自体は軽症で経時的に重症化することはないものの、インスリン分泌低下は生涯を通じて緩やかに進行する。また、MODY2は、しばしば妊娠糖尿病の患者で診断されるが、両親と胎児の遺伝子変異の組み合わせによって出生時体重が明確に変化することが報告されている。胎児にとってインスリンは成長を促進する作用を有するためである。母親に変異があると母体は高血糖となるが、胎児に変異がない場合はインスリンを過剰に分泌する結果、出生時体重が約600g増加する。一方、胎児にも変異があればインスリン分泌は過剰にならないため、児体重は相殺されて正常範囲となる。胎児が父親から変異を受け継いでおり、母親が正常な場合には児のインスリン分泌は低値であるため発育は悪く、出生時体重は平均520g軽くなる。 MODY2のホモ変異例も報告されている。児は出生直後から高血糖となり、内因性インスリンは認められず、インスリンによる治療が必要である。両親が血族結婚であった。


・MODY1  
 MODY1の原因遺伝子の産物であるHNF-4αは糖の輸送や代謝に関する遺伝子、脂質代謝に関する遺伝子の発現を調節すると考えられているが、β細胞機能障害を引き起こす仕組みは完全には解明されていない。インスリン分泌の障害は経年的に進行する。一方、インスリン感受性は良好である。アポリポ蛋白濃度の低下が認められており、中性脂肪もMODY1では低下する。  

・MODY3  
 MODY3の原因遺伝子の産物であるHNF-1αの優性阻害効果によって、糖の輸送、ミトコンドリア機能などの障害を引き起こし、最終的にβ細胞を障害すると考えられている。10代後半で急激な高血糖で診断されたMODY3の場合は、インスリン治療が直ちに開始されるので1型糖尿病と診断されることが多い。しかし、家族歴、自己抗体、HLA、比較的少量のインスリンでコントロール可能なこと、インスリン中断で容易にケトーシスに至らないこと、などが認められればMODY3を疑う必要がある。MODY3のそれ以外の特徴としてSU薬への感受性が高いこと、尿糖排泄閾値が低いことが知られている。前者については、少量のSU薬でも低血糖を起こしやすいので通常の1/4量にしたり、速効型インスリン分泌促進薬に変更して対応する。後者の特徴から腎性糖尿と過去に診断されている場合もある。


・MODY4とMODY6  
  MODY4(IPF-1遺伝子変異)、MODY6(NeuroD1遺伝子変異)は日本ではほとんど報告がない。欧米でMODY4のホモ変異例が報告されているが、膵臓は先天的に無形成で、出生後直ちに高血糖を示す。  

・MODY5  
 MODY5は、HNF-1βが膵臓に発現する以外に、胎生期における泌尿生殖器系臓器の発生分化にも関与するため、腎臓、子宮などに腎嚢胞、子宮奇形などをもたらすことが知られている。MODY5では全例が糖尿病と関連しない様々な程度の腎疾患を合併している。このことから「HNF-1β変異に関連した腎嚢胞と糖尿病」(renal cysts and diabetes syndrome)という疾患概念も提唱されている。MODY5の腎障害の原因は発生障害およびネフロン形成異常であることが示されている。最近、MODY5遺伝子の全体あるいは一部エクソンの欠失例が報告され、注目されている。

臨床症状

 学校検尿で尿糖を発見され、痩せ型で両親の一方か同胞に糖尿病を認めればMODYの可能性が高い。さらに、尿糖の排泄閾値が低い場合はMODY3の、また、腎機能障害(蛋白尿)や腎嚢胞を合併する場合はMODY5の可能性がある。我々の施設での調査結果ではMODY3の頻度が全体の15%と最も高く、平均診断時年齢は14歳、MODY1とMODY5が1~2%でMODY2、MODY4、MODY6は稀であった(表)。この頻度はわが国の他施設の成績ともほぼ一致している。また、MODY3とMODY4遺伝子変異は明らかに中年以降で発症した2型糖尿病においても報告されている。

診断・鑑別診断



診断

1 臨床診断臨床的には家族歴では糖尿病診断時年齢、肥満歴、腎臓の病気の有無が特に重要である。MODYの提唱者であるTattersallとFajansの定義(1975年)では、「①発端者の診断時年齢が25歳未満、②3世代以上の遺伝歴があり、③各世代において同胞の約半数に糖尿病を認める」とされた。一方、25歳未満で2型糖尿病が診断され、少なくとも親兄弟に25歳未満で糖尿病を診断されたものが1名以上認められ、優性遺伝であればMODYとする立場もある。従って、両親がともに糖尿病であったり、同胞全員が糖尿病の場合には注意が必要である。  

2 遺伝子診断遺伝子診断のメリットは病型が確定し、予後推定が可能となり、治療の選択が適確にできることである。遺伝子診断にあたっては、本人や家族に遺伝子検査の意味を正しく理解できるように専門家が適切に説明し、理解できた上で検査に同意するという手順が必要である。従って、遺伝子診断を考慮する場合は遺伝カウンセリング機能を備えた大学などの専門機関に紹介する。現在わが国では遺伝・遺伝子情報を適切に扱うための診療体制が急速に充実しつつあり、2003年6月の時点で遺伝子医療部門(遺伝子診療部、遺伝カウンセリング室あるいはそれに類似した組織)は全国で38の大学病院および国立医療機関に設置されている。さらに28の医療機関で設立の準備が進められている。筆者らの施設でもMODY遺伝子解析依頼を受け付けている(東京女子医大病院附属遺伝子医療センター)。

診断のポイント

 先にも述べたように、一見したところ普通の1型糖尿病あるいは2型糖尿病と何ら変わるところがないため、MODYを疑って家族歴を詳しく調べることが診断のポイントである。
家族歴を聴取する際は以下の点にも注意する。

1.母系遺伝の可能性はないか(難聴を合併していればミトコンドリア糖尿病の可能性がある)。
2.MODY家系に一般の2型糖尿病が混じって存在すると、典型的な優性遺伝形式とはならない可能性がある。
3.糖尿病は一般に無症状であることから、たとえ発症していても検査を受けていなければ本人自身でさえ糖尿病であることを知らない場合がある。
4.1997年の時点で日本においては、40歳以上で10人に1人、60歳以上では5人に1人が糖尿病と推定されていることから、遺伝要因に関わらず偶然糖尿病が3世代揃う場合もある。

治療の基本と方針

 MODY1~6ではインスリン産生細胞である膵臓のβ細胞からのインスリン分泌不全が高血糖の原因となっている。従って、経口血糖降下薬でインスリン分泌不全を補ったり、インスリンそのものを投与する方法が選択される。MODY1やMODY3ではスルフォニル尿素薬に対する薬剤感受性が高く、ごく少量で血糖降下作用が認められることが多い。同様に、インスリンに対しても感受性が高く、少量のインスリンでも低血糖になりやすい。しかしながら、MODY2を除いたMODY1、3~6はインスリン分泌能がもともと低い上に、病気の自然歴としてさらに低下傾向を示すため、将来的にインスリン治療に移行する症例が多い。

 MODY2ではインスリン分泌能は終生ほぼ横這い緩やかに低下する程度であり、食事療法か少量の経口血糖降下薬で管理可能であることが多い。基本的にはそれぞれのタイプのMODYの病態に合わせた治療を選択する。

治療目標

 若年発症であるため罹病期間が長期化するので、できる限り最良のコントロールをめざす。糖尿病治療ガイドラインによれば、HbA1c5.8%以下を目標とするが、個々の症例に応じて目標レベルを設定する必要がある。

実際の処方例

 SU薬に感受性が高い症例(MODY3)では少量の第1世代SU薬あるいは速効型インスリン分泌刺激薬を用いる。また、インスリン感受性の高い症例では低血糖を防止するために、少量の速効型インスリンや超速効型インスリンを用いる(0.5単位刻みのペン型注入機など)。

経過を見るときのポイント

 MODY2以外は全て転写因子遺伝子が原因である。現時点では転写因子遺伝子の効果が実際の症例にどのような表現型として現れているのかは完全には解明されていない。従って、説明のつかない臨床所見が得られた場合は遺伝子の効果そのものを見ているのかもしれない。そのような臨床例の蓄積により、MODYの新たな表現型や転写因子の標的遺伝子を見出す糸口となる可能性も充分にある。

 入院の適応と時期は通常の糖尿病と同様の考え方でよく、緊急を要するときの処置も一般の糖尿病への対応と同じである。

MODY遺伝子研究の歴史

 MODYの最初の記述は約50年前の1960年にさかのぼる。この年、ミシガン大学内分泌学教室のFajans博士は「トルブタマイド*で改善した若年者の軽症糖尿病」の症例を医学雑誌Diabetesに報告した。その後1975年には、Tattersall博士とFajans博士MODYの疾患概念を確立した(診断のポイントに述べた3条件)。
*(スルフォニル尿素薬:膵臓に作用してインスリン分泌を促進するが作用は弱い)

 これまで述べてきたように、MODYの成因には遺伝が深く関与しており、現在までに6種類のMODY遺伝子が明らかにされているが、これらの遺伝子が明らかにされ始めたのは1992年以降になってからである。

 MODYの原因遺伝子研究も分子遺伝学の発展とともに飛躍的に進展した。まず、1991年にはFajansが長年観察してきたMODY家系(RW-family:5世代200名以上の構成員が研究対象となっている)の連鎖解析によって、家系内の糖尿病と染色体20番長腕領域との連鎖が明らかにされ、原因遺伝子(MODY1)はこの領域に存在する事がわかった。しかし、当時はこの領域に糖尿病に関係する遺伝子は存在しなかったため、遺伝子そのものの発見には至らなかった。翌1992年には、フランス人MODY家系の連鎖解析によって、新たに染色体7番短腕上の領域に原因遺伝子が存在する事が明らかにされた。この領域には糖代謝で重要な役割を担っているグルコキナーゼ遺伝子が存在していた。この家系の糖尿病患者についてグルコキナーゼ遺伝子の変異検索を行ったところストップコドンが発見され、グルコキナーゼ遺伝子がMODY2であることが明らかにされた。1995年には同じくフランスの研究グループが3番目のMODY遺伝子座位として染色体12番長腕領域を報告した(MODY3)。その後、1996年には山縣らは家系内のMODY3患者で染色体12番長腕領域に存在するHNF(hepatocyte nuclear factor)-1遺伝子に変異認められることを突き止めた。HNF(hepatocyte nuclear factor)-1は転写因子であり、この成果によって初めて転写因子をコードする1種類の遺伝子の機能障害によって遺伝的に若年で糖尿病を発症することが明らかに示され、従来まで問題にされてこなかった転写因子と糖尿病の関連が世界で初めて明らかにされた。

 さらに、HNF-1と類似した構造を有するHNF-4がMODY1領域に存在することから、MODY1家系でHNF-4遺伝子検索を行った結果、家系内の糖尿病においてHNF-4a遺伝子に変異がが証明された。続いて、米国のMODY 家系において膵臓の発生分化に関わる転写因子であるIPF-1(insulin promoter factor-1)遺伝子の検索により、MODY4が見出された。また、HNF-1やHNF-4はHNF-1とネットワークを形成していることから、HNF-1の検索によって日本人MODY 家系からMODY5が同定された。同様に転写因子ネットワーク内の遺伝子であるNeruroD1/BETA2(neurogenic differentiation 1)遺伝子の変異スクリーニングによって、MODY6が同定された。

その他

 既知のMODY遺伝子であってもその機能はまだ完全には解明されていないことから、MODY研究により今後さらに糖代謝調節のしくみ、ひいては糖尿病の原因が明らかにされる事が期待される。さらに日本人ではMODYの約80%の原因遺伝子が不明であることから新規のMODY遺伝子が同定されれば糖尿病の新たな発症機序を遺伝子レベルで解明できる可能性がある。このような知見は新規の糖尿病治療薬の開発などに応用できると考えられる。MODY遺伝子は複雑な相互作用によりインスリン遺伝子などの発現を調節している。

参考図書

1) 第26章 若年発症成人型糖尿病 ジョスリン糖尿病学 第2版,メディカル・サイエンス・インターナショナル 2007年3月

2) 日本糖尿病学会 編:糖尿病遺伝子診断ガイド 第2版 ,文光堂 2003年5月

3) XI 遺伝子検査 246 グルコキナーゼ異常症 247その他のMODY遺伝子(MODY1, 3, 4, 5 & 6) 検査値のみかた ―付 パニック値・警戒値― 改定3版,中外医学社 2006年6月

執筆者による主な図書

1) 岩﨑直子・門脇孝 編:MODY「糖尿病ナビゲーター」,メディカルビュー社 2009

2) 岩﨑直子・高久文麿 編:MODY「外来診療のすべて 改訂第3版」,メディカルビュー社 2003

3) 岩﨑直子、中井利昭 編集代表:247.その他のMODY遺伝子(MODY1,3,4,5 & 6)「検査値のみかた 改訂3版」,中外医薬社 2006

4) 岩﨑直子 訳、金澤康徳 他 監訳:26 若年発症成人型糖尿病「ジョスリン糖尿病学 第2版」,メディカル・サイエンス・インターナショナル 2007
 

執筆者による推薦図書

平田幸正 著:糖尿病の治療 追補版,文光堂 1993
  →基本的で重要な内容を、極めて具体的かつ明確に解説

(MyMedより)その他推薦図書

1) 越山裕行 著:最新内分泌代謝学ハンドブック,三原医学社 2006

2) 日本糖尿病学会 編集:糖尿病専門医研修ガイドブック―日本糖尿病学会専門医取得のための研修必携ガイド,診断と治療社 2009
 

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