熱傷 - MyMed 医療電子教科書

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最終更新日:2010.11.01

熱傷(ねっしょう)

burns,burn injury

執筆者: 古江 増隆

概要

 周知のごとく、熱傷は皮膚のみの病変ではなく,それによる炎症反応,体液変化,循環呼吸変化,代謝など,多臓器に変化をきたす「全身性疾患」である。

重症度判定

 初期の重症度判定はその後の治療方針を決める上でとても重要である。さらに熱傷の症状および重症度は時間とともに刻々と変化し,治療を行いながら修正を加える必要がある。また火炎熱傷の場合は常に気道熱傷を意識して評価すべきである。

 受傷面積の測定法として現場で頻用されているのは9の法則である(図1)。


図1. 受傷面積の測定法 

 ただし,頭部の占める割合が大きい小児には5の法則がよく用いられる。また,小範囲の受傷面積の算定には,患者の手掌面積をほぼ1%とする手掌法を使用する。成人で体表面積の30%以上,小児や高齢者では15%以上の場合「重症熱傷」として扱う。重症度に影響する部位は気道,顔面,外陰部・両手である。気道熱傷がある場合には死亡率が高くなる。

 熱傷深度の評価については、日本熱傷学会熱傷深達度分類と補助診断法を(表1)にまとめた。


表1. 熱傷頻度の分類 

 ここで問題となる点は,II度(DDB:deep demal burn; 深達性II度熱傷)とIII度(DB:deep burn; III度熱傷)との区別であるが,実際には専門医でも困難なケースが多い。同じ熱傷創に異なった深度創が混在し,かつ時間とともにそれが変化していく。

 受傷面積と熱傷深度の組み合わせにより,重症度を総合判定する基準が考案されている。

(a)バーンインデックスburn index(BI)

 BI=III度熱傷面積(%)+1/2 x II度熱傷面積(%) 10~15を重症として扱い,30以上は死亡率が約50%となる。

(b)熱傷予後指数prognostic burn index(PBI)

 PBI=bum index(BI)+年齢 80~100を重症熱傷とし,120以上は致命的熱傷と考える。

(c)Artzの基準

 重症熱傷の基準は,(1)II度30%以上、III度10%以上とする,(2)軟部組織熱傷,(3)気道熱傷の合併,(4)骨折の合併,(5)化学熱傷,電撃傷を含む。

治療

全身療法

(a)モニタリング

 特別な検査項目があるわけではなく,重症救急患者に共通する検査項目が該当する。特に,気道熱傷を伴う場合の血液ガス検査,初期腎不全へ対処するための尿検査(ミオグロビン尿,ヘモグロビン尿)には注意を払うべきである。

(b)尿量の経時的モニターを行いながら、適切な輸液療法を行う。

局所療法の基本

 局所療法の目的は破綻した皮膚機能の代償で,適度な湿潤環境の提供,保護機能と疼痛の緩和である。さらに,創傷治癒を促進させ,これは壊死組織の除去,肉芽および表皮形成促進が求められる。局所療法は熱傷深度により異なり,各深度に応じて適切な処置法が選択される。

(a)I度

 冷却療法(深度にかかわらず必須の方法)とステロイド軟膏を塗布する。

(b)浅達性II度

 水疱は創面を保護する最も適切なバイオロジカルドレッシングであるので,内容液を穿刺・除去し,水疱蓋を温存して創面に密着させる。その後,シリコンガーゼ,軟膏ガーゼ,創傷被覆材を用いて被覆する。

(c)深達性II度

 治療は(b)と同様である。治癒までに期間を要するが,適切な処置で上皮化させることができる。一方,感染や物理的刺激により容易にIII度熱傷に移行し得るので,特に機能的な部位は早期の植皮術も念頭に柔軟な対応が必要である。

(d)III度

 小範囲の場合を除き,保存的療法で創傷治癒は得られない。できるだけ早期の手術治療が基本となり,それまでの期間に感染を抑え,可及的に壊死組織を除去する処置を行う.最近、トラフェルミンスプレー(塩基性線維芽細胞成長因子)の外用が浅めのIII度熱傷以内であれば、早期の肉芽形成と上皮化を促し治癒後の瘢痕形成も少ないことから、全身状態が良好であれば第1選択薬として用いる頻度が多くなった。全身状態の悪化を招きつつあるIII度熱傷はできるだけ早期にデブリドマンを行う。スルファジアジンクリームなどの壊死組織に浸透性が高いクリーム製剤を中心に,化学的デブリドマンを目的に酵素製剤を併用することもある。

 さらに,全身状態が許せば,可能なかぎり入浴を勧め,全身皮膚を清潔に保つことも重要である。治癒後の瘢痕と植皮痕の醜状,肥厚性瘢痕,瘢痕拘縮による機能障害など,精神的問題も含めて様々な後遺症を残すことが多い。外来での保存的療法に加え,瘢痕除去のための手術を追加し,粘り強い治療態度が要求される。

化学熱傷 chemical burns

 酸,アルカリ,種々の化学物質の接触により生ずる損傷で,一般にアルカリ損傷が重症である。現在,約25,000種類以上の生産物が化学熱傷を起こす物質として販売されている。清掃業で,汚れ落とし洗剤として使用されるフッ化水素による化学熱傷の報告が多い。熱傷と類似の症状を呈し,強い痛みを伴う。治療は,すみやかに流水で洗浄し,原因物質を除去する。以後,熱傷の治療方針に準じ,全身的要因にも留意すべきである。

電撃傷 electrical injury,lightning injury

 体内を電流が通過して起こる損傷の総称である。一般外傷と異なり,重篤な損傷が体深部で徐々に進行し,後遺症も含めた長期に及ぶケアが必要となる。通電による直接障害として、不整脈と神経線維,血管内皮細胞,筋線維の細胞膜の障害(ミオグロビン尿が発生)などが起こる。通電によって生ずるジュール熱によって,電流の流入・流出点で電流斑もしくは電紋と呼ばれるIII度熱傷創が形成される。電撃傷を受けた際の状況によって、頚椎・頸髄損傷,頭蓋骨骨折,頭蓋内損傷,胸腹・骨盤損傷,四肢長管骨骨折等の副損傷を受けている場合も多く注意する必要がある。
 
 

(MyMedより)推薦図書

1) 夏井睦 著:創傷治療の常識非常識〈2〉熱傷と創感染,三輪書店 2006

2) 夏井睦 著:これからの創傷治療,医学書院 2003

3) 岩田健太郎 著・編集:感染症999の謎,メディカルサイエンスインターナショナル 2010

 

免責事項

情報の正確性には最善の注意を払っておりますが、内容により生じた損失、損害についてMyMedおよび執筆者はいっさいの責任を負わないものとします。
ご自身の健康上の問題については、専門の医療機関とご相談ください。

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